253 デートの場所
「小乃羽ちゃ~ん!!」
「あ、御姉様!」
部活動に行くため、テニスコートに着いた私は後ろから御姉様の声が聞こえてきて振り返ると笑顔で手を振る御姉様が見えた。
あの反応はお兄様から話を聞いたのだろうか‥‥御姉様は私とお兄様のお付き合いを認めてくれているのだろうか‥‥。
今の反応を見るに、そうかもしれないが‥‥もし、私が今までにやってきたことを御姉様が知っていたなら、きっと御姉様は私を認めてはくれなかっただろう。
‥‥でも、それを今、御姉様には話せるはずがないし、私はかなりの罪悪感を抱えつつ、それがわからないように心の奥に無理矢理しまいこむ。
「ふぅ~、まずはおめでとう、小乃羽ちゃん!」
「あはは、ありがとうごさいます、御姉様。 あとすみません、先に話せなくて」
本当に急だったからね‥‥。
改めて考えれば一度御姉様に相談していてもよかったかもしれない。
‥‥でも、言われることはないだろうけど、もし御姉様から駄目だと言われた日には、私は告白は出来なかったと思う。
我が儘かもしれないが、御姉様に嫌われるのは今となっては考えたくない。
「そんなのいいよ。 告白のタイミングってその場で言いたくなることってあると思うし気にしないで。 それで、どうなの?」
「どうとは?」
「もう初デートの場所とか決めたのかなって」
御姉様もアイちゃん達と同様にデートのことが気になるようだ。
「いえ、それはまだですけど、昨日の別れ際に連絡するとは言ってましたよ」
まだ連絡は来ていないが、忘れているということはないだろう。
まぁ、自分からしてもいいしね。
「楽しみだね!」
「えぇ、楽しみです♪」
自分が楽しむだけではなく、出来るだけ、お兄様に楽しんでもらえるように頑張らないとね。
◆◇◆◇◆◇
「お姉ちゃん! お、映画ですか‥‥無難でいいかもしれませんね」
「こ、小乃羽ちゃん‥‥! いつの間にか後ろにいたからビックリしたよ‥‥」
というか、携帯覗いてたんですね‥‥そこまで気になりますか‥‥。
『透明化装置で狙ってたみたいですよ。 今度こそ重要な場面を逃さないようにって‥‥』
「アイちゃん! お姉ちゃん、ぐ、偶然ですよ‥‥あはは‥‥」
いや、別に言ってくれれば見せるし言うよ?
まぁ、お兄様とのやり取りを見られるのは少し恥ずかしくはあるけれど‥‥。
『それで、私は一応デートを遠くから観察させてもらうつもりですが、どうでしょう?』
「私は大丈夫だよ。 姿は消しておくんだよね?」
『はい、極力邪魔にならないようにしますよ』
まぁ、もしもの時はいてくれたほうがありがたいしね。




