242 遅れた理由
『おかしいと思いませんでしたか? 私たちがこの世界に来るのがあまりにも遅かったことに』
私の感覚ではそんなに遅くはわかったが、アイちゃん達が何年もあの世界にとどまるとは思っていなかったので、それを知ったときはかなり驚いたのは覚えている。
「確かに不思議ではあったよ、だって小乃羽ちゃんがこんなに成長していらっしゃるし‥‥いや、結局どういうことなの?」
『つまり、遅かった理由の一つがそれということですよ。 何年もかけて、磨北さんを見守っていたんです』
「どうして磨北さんを‥‥」
『別に磨北さんだけを見ていたわけではないですが、陸さんが亡くなった後の世界を見ることで何かヒントがあるかもと思ったんですよ』
「まぁ、本音は磨北さんが自暴自棄になってないか心配だったからなんですけどね。 もしそうなったらお姉ちゃん、また自分のせいだって思ってしまうでしょう?」
「そう‥‥だね」
確かになにもなくても申し訳ない気持ちでいっぱいなのに、そのせいで磨北さんに何か起きたら、私は一生自分を恨むだろう。
「‥‥あれ? 結局それがなんでこの世界で磨北信さんを調べることが意味がないということになるんですか?」
前の世界とこの世界になんの繋がりが‥‥。
『正直に話します。 前の世界で磨北さんは交通事故に遭いました』
「え‥‥磨北さん‥‥交通事故‥‥?」
それって‥‥。
『そして、私達が駆け寄った時には既に助からない状態で‥‥私達は磨北さんをどうするか話し合った結果、陸さんと同じように出来るのではないのかという結論にいたりました』
「同じようにって‥‥つまりは磨北信さんは前の世界の祈実さんってこと?」
『理解が早くて助かります。 なので調べたところで無意味ということです』
何だか一瞬にして色んな情報があって、私は考えがまとまらない‥‥。
「でも‥‥交通事故‥‥」
『別に夕闇さんのせいではないですよ。 あれはきっとなにもしなくても起こり得たことでしょうから。 まぁ、その事故は陸さんと同じでどう回避しようとしても助けることは出来なかったでしょうけど‥‥』
「だから磨北信さんに‥‥」
『えぇ、丁度磨北祈実さんと信さんの相性がとても高くて、ある意味、磨北祈実さんにとっては一番理想的な体だったわね』
「兄弟だから高いというわけではないんだけどね。 でもお姉ちゃんといい磨北さん達といい、兄弟では凄く高いですね」
そうだった、高くないと腕時計は使えないんだったね‥‥。
あれ? 磨北さんに腕時計を使ったってことでいいのかな?




