241 転校生のことについて
「何だか御姉様のクラスに転校生が来たみたいなんだけど‥‥その人が磨北っていう名字なんだよね‥‥それって‥‥」
「あぁ、磨北信さんですね。 転校してきたんですね」
‥‥あれ? 何だか思っていた反応と違う‥‥。
そもそも私まだ下の名前は言ってないのに‥‥前から知っていたかのような感じだ‥‥。
「小乃羽ちゃん、その人のこと知ってるの?」
「‥‥あれ? お姉ちゃん知らないんでしたっけ? 磨北信さんって、磨北祈実さんの弟です」
弟‥‥あ、確かに磨北さんから弟さんがいたということを聞いたような気がする‥‥あれ? でもその弟さんって、確か‥‥。
「弟さんって事故で亡くなったって話を磨北さんから直接聞いたような気がするんだけど‥‥」
「その認識であっていると思いますよ。 まぁ、ひとつ前の世界では自殺だったらしいですが‥‥」
方法は違えど亡くなるのは前回の世界も同じだったのか‥‥でも、今回の世界ではそれが起きていない?
この世界が特別で、偶然亡くならないような世界になったってことなのか?
もし、そうならその方法を探れば、お兄様を助けられる道が見えるかもしれない。
「そういえば、弟さんが転校してきたってことは磨北さんも転校してきたのかな?」
「そうですね、転校してきたんじゃないでしょうか」
私は磨北さんに会わせる顔なんてあるのだろうか‥‥出来るだけ会わない方が磨北さんの為になるんじゃないかという気持ちになる。
‥‥ん? そういえば、磨北さんってこんなに早く転校してきたんだっけ?
「何だか転校してくるのが早いね」
「そうですね、磨北信さんが生きているということが変化を起こしたのかもしれませんね」
「‥‥ねぇ、小乃羽ちゃん。 その弟さんがなんで今までと違ってこの世界では生きているのか調べてみたらもしかしたらお兄様を助ける方法がわかるんじゃ‥‥!」
「あ、いや、お姉ちゃん、あのですね‥‥」
『残念ながら、無理ですよ』
何処から突然現れたアイちゃんがそんなことを言う。
無理ってどういうことだろう‥‥。
「どうして無理なの?」
『だって、あの磨北信はある意味では本当の磨北信ではないんですよ。 そういう風にしないと運命なんて変わらなかった‥‥いや、今現状も本当に変わったのかは疑問ですからね』
「ど、どういうこと? 何を言ってるの?」
私はアイちゃんが何を言っているのか全くといっていいほど、理解できなかった。
『つまりはですね、やったのは私たちなんですよ。 あの磨北信‥‥いや、磨北祈実さんがいたら何かが変わるかもという期待も込めて‥‥ね』
‥‥二人が弟さんを救ったってこと?




