240 帰り道の会話で
その後、覚悟を決めたのはいいのだけど、その機会は一向にこない。
そもそもお兄様に会うことがない。
中学校と高校で学校が違うわけだから学校内で偶然会うということが出来ない。
それと今お兄様とお話をする時には必ずといっていいほど、御姉様や森田先輩がいて中々難しい。
だからといって御姉様がいないと会うことすら出来ないのだから御姉様には感謝してもしきれないけど。
御姉様とは部活の帰り等で灘実さんと三人になることがよくあるので、その時に色々とお話ししたりする。
その度に御姉様の優しいところや可愛いところなんかが凄くわかって、そういうところを見ると改めて自分のしたことがどれだけのことなのかも思い出す。
私は本当は御姉様とお兄様と一緒にいられるようなそんな人間ではないという思いが心の中で渦巻く。
「小乃羽ちゃん、大丈夫? 部活で疲れちゃったかな? 中々最近は練習がハードだからね」
「あ、いえ、少し考え事をしていただけですよ。 それに御姉様と一緒にいれば疲れなんて吹き飛んじゃいますからね」
「な、なんて可愛いんだこの子は‥‥」
御姉様と一緒にいるのは楽しいので本当に疲れなんて吹き飛ばしちゃいますけど、別にその反応は違うような‥‥。
その後は学校での話になったのだが‥‥。
「あ、そうだ。 今日転校生が来たんだよね」
「へぇて、転校生ですか。 この時期に珍しいですね」
「そうなんだよ。 珍しいよねー」
私が夕闇奈留として中学校に通っていた時に転校してきた人なんていたかな?
いや、そんな人いなかったような気がする。
「どんな人だったんですか?」
「優しそうな人だったわね」
それだけではどんな人かわからないので、私は首をかしげる。
「そうだね。 まだ話してないからわからないけどね」
まぁ、初日に別に話しかける必要はないよね。
まだまだこれから話しかける時間があるんだから。
「そういえば、その人の名前は何て言うんですか?」
聞いてもわからないだろうけど、一応は聞いてみるべきだろう。
「磨北信って名前だったよね?」
まきた‥‥磨北さん!?
どういうこと? 磨北ってあの磨北さんの磨北だよね?
でも、私が知っている磨北は磨北祈実さんだけだ。
親戚? いや、そもそも転校生なんていなかったわけだからこの世界独特なのかな?
‥‥でも、無視していいことではないはずだ。
今までいなかった人がいることで何か今までと違うことが起きているのが不安になり私はその事を相談するために、急いでアイちゃんと小乃羽ちゃんが待つ、家へと帰った。




