66 祈実さんと電話で
途中で、信くん視点になります。
『久しぶり~奈留ちゃん!』
思い立ったら即実行! とはいかず、まずは電話で祈実さんに確認する。
家に行った時に連絡先教えてもらっていてよかった~。
「お久しぶりです、祈実さん。 今って大丈夫ですかね?」
『うん、暇だし大丈夫だよ~。 それでどうしたの?』
私は平常心を保とうと頑張っているのだが、正直すごく緊張で、声が震えそうです。
もう慣れてるだろうと思っていたが、まだまだ難しいみたいですね。
「す、少しお願いしたいことがありまして」
『奈留ちゃんが私にお願い? いいよ、引き受けた!』
即決!?
「そんなあっさり、まだ内容言ってないんですが」
『お姉さんに任せなさい! 奈留ちゃんの頼みなら何でもしちゃうよ』
「あ‥‥ありがとうごさいます」
やっぱり祈実さん、いい人だぁ。
少し変わったところはあるかもしれないが、やっぱり優しいところは変わってないんだなぁ。
『個人的には、お姉ちゃんになってくださいとかなら嬉しいかなぁ♪』
うん、やっぱり少し変わったところはあるみたいです。
それとも女の子に対する祈実さんってこうなのかな?
でも、お姉さんって少し憧れではあるかな。
祈実さんみたいなお姉さんならきっと楽しいだろうし。
「あはは、それもいいと思いますが、今回は別のお願いです」
『そうなんだぁ。 でも、いつでもウェルカムだからね』
「はい、それでお願いというのがですね───」
私は手短に経緯を説明した。
『うん‥‥うん。 了解だよ~。 じゃあまたね奈留ちゃん』
「はい、よろしくお願いします。 祈実さん」
私はうまくいくことを願いつつ、祈実さんとの電話が終わった。
◆◇◆◇◆◇
───バンッ!
「信くん! 今度の休日暇かな?」
うわっ! ビックリした。
急にきさねぇが、勢いよくドアを開けて、僕の部屋に入ってきたので、不意だったこともあり驚いた。
はぁ、いつも思うが、もう少しゆっくり開けられないんですか。
「暇だと思うけど、どうしたの、きさねぇ」
「その休日に奈留ちゃんの家に行こうって話になってね。 信くんも行くって言ってたよね?」
そういえば、言ってましたね。
その時は夕闇くんを少し見てみたいっていう気持ちと、どういう関係なのか見てみたい気持ちがあった。
でも今はあまり行こうという気になれないな。
「きさねぇ、その話だけど」
僕は行かないと言おうとしたら───、
「え、行かないの?」
きさねぇは涙目になりながら、僕を見た。
困ったときはいつもそれなんだから‥‥。
「‥‥わかった、行くよ」
「うん、よろしい♪」
こうして僕は、きさねぇに流されるまま夕闇さんの家に行くことになった。