237 変化のために
「出来ること‥‥そんなのあるかな? こんなこと言っちゃダメかもだけど、お姉ちゃんがお兄さんの妹の時の方が色々と出来た気がするけど?」
私が思っていたことをそっくりそのまま小乃羽ちゃんが言ってくれたので、私は黙って頷く。
『確かに一緒にいる時間が極端に減ったことで、出来なくなったことが多くあるかもしれない。 でも、その逆もあるはずよ』
「確かにそうだね! 全然思い付かないけど!」
『少しは思考を働かせなさいよ。 ほら、少し考えればわかることがあるでしょ』
アイちゃんは思い付いているようだけど、私達に教えてはくれないようだ。
まぁ、何でもかんでもアイちゃんに答えを聞くのは違うような気がするしね。
「お姉ちゃん、思い付きました?」
「う~ん‥‥」
兄妹で出来なくて、小乃羽ちゃんになった今なら出来ること‥‥何だろう‥‥。
「‥‥‥‥あ、結婚?」
『なんでいきなりそこまでいくんですか‥‥いや確かに方向性は間違ってませんけども‥‥』
ほとんど冗談で言ったつもりだったんだけど‥‥。
でも、方向性は合ってるの?
「そういうことですか‥‥お姉ちゃん私わかりました! つまりは恋人ってことですね!」
「こ、恋人!?」
た、確かに兄妹では無理‥‥いや、何だかそれを自分で認めてしまうのは少し嫌だけども‥‥。
でも、妹だからお兄様に妹としか見られないというのはあったかもしれない‥‥。
『そういうこと。 つまりは付き合うことで何か変化があるかもと思ったわけです』
「確かに、お姉ちゃんと付き合っちゃえば、デートで遠出するなんてことはお姉ちゃんがさせないでしょうし、うまくいけば皆ハッピーですね」
『まぁ、そんなに都合よくいくかはわからないけど、せっかくだし試してみるというのもありだと思いますよ』
「ちょ! ちょっと待ってよ二人とも! そんな簡単に付き合えるわけ‥‥そもそも、小乃羽ちゃん、この体は小乃羽ちゃんなんだよ?」
「そうですね」
「‥‥嫌じゃないの?」
「私は色んな可能性も考えて、お姉ちゃんに私の体を使ってくださいと言ったわけで、そんなことぐらいじゃなんともないですよ」
いや、それでも‥‥。
そもそも、私みたいな人間がお兄様とお付き合いなんて出来るわけがない。
今更、お兄様を好きだなんて、そんなことおこがましくて言えるわけがない‥‥。
それに私は磨北さんとお兄様とのお付き合いの邪魔をしないって、あれほど誓ったはずなのに、私が付き合おうなんて、そんなこと考えることすら駄目だと私は思わずにはいられなかった。




