236 試していないこと
「じゃあ、どうするべきなのか一緒に考えましょう!」
小乃羽ちゃんとアイちゃんの口論がようやく落ち着き、どうやってお兄様を助けるのかを考えることになった。
「でも、小乃羽ちゃん。 私は試せることは今までの世界で全て試したと思ってるし、これ以上何かするなんて出来るのかな‥‥?」
「そこはほら、もしかしたら何か見落としてることが‥‥思い浮かびませんね」
『初っぱなから考えることをやめてどうするのよ。 あんたが一緒に考えようって言い始めたのに』
「だって、お姉ちゃんの言うとおり、一通りやったし‥‥それにそんなのがあったら既にもっと前の世界で提案して実行してるはずだよ」
『あの頃から変わってることだってあるはずでしょ? きちんとそこを見直して、それでもないと言える?』
変わっていること‥‥確かにそれを考慮して考えていなかった。
でも、変わったところといったら‥‥御姉様がいたりとか‥‥私が妹ではなくなったこととか‥‥あ、あとは小乃羽ちゃんが蕾ちゃんの弟子じゃなくなったこととか‥‥いや、それは前の世界からか‥‥。
「‥‥あ、あったね! 私が凄く成長したこと! これはかなりの変化だよね~」
『確かに変わったことだけど、それはしてもしてなくてもなんの影響もない変化ね。 無価値よ』
「人の成長を無価値とか、このAI‥‥」
「お、落ち着いて、小乃羽ちゃん」
また口論が始まってしまいそうになったので、私は全力で小乃羽ちゃんを止める。
「大丈夫です、お姉ちゃん。 私も大人になりましたから、少しくらいなら我慢もできます」
「そ、そっか‥‥」
じゃあ、この話し合いの直前の口論はなんだったんだろうかとも思ったが‥‥それは我慢できなかったということでいいのかな?
その後はまた何事もなかったかのように話し合いに戻った。
『夕闇さんはなんの変化なのかわかりましたか?』
「えっと、色んなのがあったけど、一番は私が小乃羽ちゃんの体になっているってところじゃないかな?」
私にとって、これが一番大きな変化といってもいいと思う。
『その通りです。 夕闇さんが小乃羽になった。 それで改めて出来るようになったことを考えていくべきです』
小乃羽ちゃんになったことで出来るようになったこと‥‥か‥‥。
でも、小乃羽ちゃんになってから、特別何か出来たわけでもなく、ただお兄様との関係を改めて作らないといけないので、逆に大変になったような気もする。
距離が離れてしまったわけだけど、何か出来ることなんてあるのだろうか‥‥。




