231 演じる
お化け屋敷を出たあとも御姉様は初めの元気はなかった。
私のせいだろうから、今ここですべてをさらけ出して謝りたい。
‥‥でも、それは私の自己満足で、今楽しそうに生きている御姉様の邪魔になるんじゃないかと、あの出来事を思い出させることなんじゃないかと思い言えなかった。
今日だって楽しむために遊園地に来ているわけだしね‥‥。
それにアイちゃんや小乃羽ちゃんに迷惑がかかるだろう。
それでなくても自分勝手に動いてしまって、一度大きな失敗をしていた私には勝手な行動はできない。
今の私は自分を出さずに小乃羽ちゃんを演じるという選択しかなかった。
その後、ランチを挟んだことで御姉様は徐々にお化け屋敷に入る前の状態に戻っていた。
私は心のなかでホッとはしたものの、罪悪感のようなものが残っていた。
しかし、その気持ちを表に出すわけにはいかないので、次のアトラクションに意識を向けた。
次のアトラクションは話し合った結果、コーヒーカップになった。
まぁ、少しゆったりな乗り物ではあるけれど、お化け屋敷で消耗した御姉様のことを考えればいいかもしれない。
そして、コーヒーカップは二人ずつで乗ったのだが、私は御姉様と、一緒に乗ることになった。
コーヒーカップが動きだし、御姉様は無邪気な笑顔で楽しんでいた。
私もいつの間にか一緒になって楽しんでいて、先程までの暗い気持ちはほとんどなくなっていた。
そして、御姉様はアトラクションが止まったとき、少し名残惜しそうな表情をしていた。
「また乗りましょうね」
「そうだね、楽しかったしね。 もっと長くてもよかったのに‥‥」
そして、その後何だか気分が悪そうにしている森田先輩の為にまた休憩をし、次は私が乗りたいと言っていたジェットコースターになった。
◆◇◆◇◆◇
一応は皆さん賛成してくれたはずだが、ジェットコースターの全貌を見て、少し後悔していらっしゃるようだった。
ほどほどの待ち時間があり、そして私達の番がやってきた。
そういえば、このジェットコースターにも乗ったことがあったな‥‥。
あのときは確か兄が隣で‥‥今の状態と少し似ているかもしれない。 関係性は違うけども。
「ねぇねぇ、小乃羽ちゃん。 やっぱり安全バーが降りると何だかドキドキしてくるね」
そう言う御姉様は何だかかなりガチガチの状態だった。
私は大丈夫だけど、蕾ちゃんは気絶してたし怖い人には怖いのだろう。
どうすれば御姉様の恐怖を和らげることができるだろうか。
「そうですね。 御姉様、もし怖くなるようでしたら手を繋ぎましょうか?」
「是非お願いします!」
これで少しは恐怖がまぎれるといいんだけど‥‥。




