223 部活を体験
そして、すぐに部活動の体験期間になった。
周りの誘いなどもあったりしたのだが、それを丁寧にかわして私はテニスコートに向かった。
私としても何度も通ったテニスコートなので迷うことなく着いたのだが、チラッと見ていると知った顔が大勢いる。
同級生で一緒に練習などをした人達が、先輩になるのかと思うと何だか変なかんじだね‥‥。
入り口の手前で眺めていると、見知った顔の三年の先輩が声をかけてくる。
「体験の新入生の子かな? どうぞ、入って入って!」
「あ、は、はい!」
入るタイミングがわからなかったこともあり、こうして引っ張ってくれるのはありがたい。
そして、すぐに他の一年生の子達も体験に来て、コートがいっぱいになる。
ソフトテニスって人多いよね‥‥まぁ、入るのかどうかは別として一度は体験しようとしているのかもしれないけど‥‥。
そして、一度一年生で集められ、やることを三年生の人たちに説明をされる。
初めだから落ちたボールを打つことをするみたいだ。
でも、ここまで多いと中々、兄には近づけないかもしれない。
先輩達も多いわけだし、一対一で教えたらかなり散らばるだろうからね‥‥。
なんてことをさっきまで考えていたのだが‥‥。
「今日はよろしくね、私は夕闇奈留っていいます」
「よろしくお願いします!!」
まさかここで兄にあたることになるとは正直思ってもみませんでした‥‥。
かなり‥‥いや、一生分の運をここで使ったのではないだろうか‥‥。
「まずは軽く打ってみようか。 まぁ、短時間なら変な癖がつくことはないとは思うけど‥‥」
「は、はい!」
でも、運を使ってしまったが、その運をいかせる気がしない‥‥。
ここからどうやって仲良くなっていけば‥‥。
しかし、きちんとやらなければ不真面目だと思われてはいけないし‥‥あぁ、でもどうしたら‥‥。
そんなことを考えていて実力を抑えるとかそんなことを一切せずにラケットを振ってしまい、ボールが綺麗にネットを飛び越え、ベースラインギリギリに入る。
確かに実力を隠さないでおこうとは思っていたけど、でも今それをしちゃうともう体験とか必要ないってなっちゃうと思ったから、今日は隠そうと思ってたんだけど‥‥。
「す、凄いね‥‥。 もしかして‥‥やってた?」
「は、はい‥‥」
こうなってしまっては隠すことも出来ない。
まぐれって誤魔化せたらいいんだけど、たぶん兄は誤魔化せないだろう。
「す‥‥」
「す?」
「凄いね! 先輩だけど、今度テニス教えてくれると嬉しいな!」
「え、えぇ‥‥!?」
ある意味これでよかったのかもしれないね‥‥。




