219 偵察をする
小乃羽ちゃんからの誘いで、兄の様子を見に行くことになったわけだけど、今回はまだアイちゃんと三人で今後の相談をしていたわけではないため、気付かれる訳にもいかず遠くからコソっと見るのだと思っていたのだけど‥‥。
『小乃羽ちゃん、本当によかったの?』
『え、何がですか? 別に偵察くらいならアイちゃん許してくれると思いますけど‥‥』
いやまぁ、それも少し心配ではあるかもだけど‥‥。
『それもかもだけど、透明化装置を私も使っているけど、いいのかなって‥‥』
裏切る前の時でも腕時計以外の発明品は私は使えなかったし、使うのは駄目だって思ってたんだけど‥‥。
『私といるんで大丈夫ですよ! 私の場合は師匠から直接許可を得ていましたからアイちゃんからも特になにも言われませんし』
『でもそれは小乃羽ちゃんだけの場合では‥‥』
『もー! いいんですよ! それに使わないとお兄さんを近くで見れませんし、気付かれちゃいますよ?』
『それは‥‥そうだけど‥‥』
『ほら、お姉ちゃん、行きますよ!』
『‥‥うん』
もし怒られるなら後できちんと謝ろうと思いつつ、私は兄がいるであろう場所に向かっていった。
◆◇◆◇◆◇
『‥‥あ、いますね! お兄さんでお姉ちゃんな‥‥お兄ちゃん?』
『いや、そこ合体させても兄が百パーセントだからね! まぁ、ややこしくはあるかもだけど‥‥』
見た目は私だもんね‥‥でも少し雰囲気は違うかもしれない。
‥‥いや、自分が思う自分と他人から見た私は違うだろうし、中身が兄だと知っているから変わっているように思うのかもしれないね。
『アイちゃんが言っていた通り、人生を楽しんでいそうですね』
『‥‥そうだね』
私があんな人間じゃなければ、元の世界でも兄は幸せに生きられた‥‥そう思うと見るのが辛くなる。
『そういえば、隣にいるご友人さんは誰なんでしょうか? お姉ちゃん、知ってますか?』
『‥‥え、あぁ‥‥灘実由南さんだね。 私はあまり仲良くない少し関わりづらいクラスメイトって感じだったんだけど‥‥でも、兄はそんな人でも仲良くなれちゃうんだね‥‥』
『誰にでも合う人、合わない人がいるものですよ。 でも、関わりづらそうな人には見えませんね‥‥。 まぁ、性格もお姉ちゃんが知っているものとは違うのかもしれませんね』
兄が私になったことできっといろんな変化が起こっているだろうし、私の知らないことも沢山起こるかもしれない。
これから様々なことが起こるだろうけど、私は兄のために頑張ろうと、兄を見ながらそう思った。




