214 最低条件
『いつの間にそんなことになってるのよ』
アイちゃんに事情を説明したら、第一声にそんな言葉が返ってきた。
まぁ、急にこんな話になったらそんな反応をするのは、当然といえば当然だよね。
「それで、アイちゃんには言っておこうと思って‥‥」
『もう決定事項を報告されても‥‥』
確かにここでアイちゃんが否定したとしても、小乃羽ちゃんは強行しようとするかもしれない。
でも、報告しておくことは大事だからね‥‥。
「で、アイちゃんはどうかな? 私の体を使ってお姉ちゃんに戻ってもらうのは‥‥」
『小乃羽がいいなら私は何も言えないわよ。 小乃羽以外に夕闇さんに合う体はなさそうだし。 ‥‥そもそも私が戻れって言ったのに今更否定するようなこと言えないし‥‥』
やっぱり、小乃羽ちゃんの言っていたように中々合う人なんていないんだね‥‥。
「じゃあ、お姉ちゃん、戻る準備をしましょうか。 戻ったあと私達もすぐにそちらにタイムマシンで行けると思うので、向こうで合流しましょう」
ついてきてくれるんだ‥‥。
‥‥いや、腕時計も持たされていて野放しにされるわけないよね。
一度裏切った人間なんだし‥‥。
それでもまた小乃羽ちゃんがついてきてくれるというのは凄く心強い。
『いや小乃羽、少しこの世界でやるべきことが出来たから、あなたはすぐじゃないわよ?』
「え、そんなこと聞いてないけど!?」
『だって、そんなにすぐに動くなんて思ってなかったもの』
善は急げと思っていたけど、流石に急ぎすぎたかもしれないね‥‥。
でも、この世界でやることってなんだろう‥‥。
「‥‥じゃあ、お姉ちゃん、私少し遅れます‥‥いや、タイムマシンがあるのでお姉ちゃんからしたらすぐかもしれませんけど‥‥」
「う、うん、待ってるね」
小乃羽ちゃんが少し残念がっていて、何だかこっちが申し訳なくなってくる。
『夕闇さん、私達が行くまで絶対に変なことはしないでください。 これはお願いではありません。 戻る上での最低条件です』
「‥‥う、うん」
「もう! お姉ちゃんがもうそんなことしないってアイちゃんが一番わかってるでしょ!」
『言うべきことは言わないと伝わらないでしょ? それよりも準備するんだったら早くしたら?』
「わかってますー! お姉ちゃん、行きましょう。 本当に全く、全くもう!」
何だか私のせいで二人が喧嘩するのは申し訳ない‥‥。
いやまぁ、元から喧嘩はよくしていたけども‥‥。
そして私達は改めて腕時計を設定し直すことになった。




