211 とある可能性
「確かに設定なんてしてなかったよ‥‥そうなると起動したこと自体が疑問だね‥‥。 でもそれが今回私が使えないのと何か関係があるのかな?」
それはそれという気もするから、関係はないように思える。
「起動したことは私としても不可思議なことではありますね。 しかしその起動も、もしかしたらという可能性が一つ思い付いているんです」
可能性‥‥なんだろう。
「‥‥あ、偶然血がついて腕時計が起動できたとか。 昔、私も偶然それで起動出来たこともあったし」
あの時、兄の血はあったわけだし、偶然腕時計の裏の部分についていたとしてもおかしくはない。
「あ、そういうこともあるかもですね。 私が言いたかったことは別のことなので、実質二つの可能性があることになりますね」
「違うんだね‥‥それでその可能性っていうのは‥‥」
私は全く思い付かないので、小乃羽ちゃんがどんなことを考えているのかはわからないが、どういうことなんだろう‥‥。
「お姉ちゃんとの相性がよくて、設定のまま起動できた可能性ですね」
「‥‥え? 答えになってないような‥‥」
相性ってそんなざっくりとしたことって‥‥。
「別になんの根拠もなく言っている訳じゃないんですよ? 腕時計の機能が自分から自分へ記憶を上書きすることですけど、同一人物ですが、ある意味では経験してきたことが違う別人な訳です。 でも戻ることができるのは自分自身の相性が良いからなんですよ」
「えっと‥‥つまりどういうこと?」
「お兄さんとの相性がよくて、問題なく腕時計が使えたのではないでしょうかね」
兄妹といっても、そんなに良いのだろうか?
「でも、そんな相性なんてわかるものなの?」
「あれ、お姉ちゃん覚えてないんですか? ほら、アプリとかダウンロードしてやってませんでしたっけ?」
「あ、もしかしなくても‥‥あの占いみたいなやつ!?」
「そうです、それです!」
確かにあったけど、あれってそんなにちゃんとしたものだったの!?
うろ覚えではあるけど、そういえば、兄とのパーセンテージは高かったような気がする。
「蕾ちゃんが作ったものだもんね、何だか納得‥‥。 でも、それがわかってもなんで私が戻れないのかはわからないね」
「え、大体さっきの話のままですが‥‥」
え、小乃羽ちゃんはわかってるの?
「どういうこと?」
「あ、えっとですね‥‥お姉ちゃん的にはちょっと想像もつかないことかもしれませんが‥‥もしかすると、お姉ちゃんの体にお兄さんの記憶が上書きされたのではないでしょうか?」
‥‥え? ど、どういうこと?




