209 私‥‥決めたよ
アイちゃんはその後言いたいことを言い終わったのか、すぐに何処かに消えてしまった。
それと入れ替わりのような形で小乃羽ちゃんが入ってきた。
もしかしたら小乃羽ちゃんが来るって思ったから消えちゃったのかもしれない。
「小乃羽ちゃん、私決めたよ」
「本当ですか! それでどちらにするんですか?」
最後までどうしていいのかわからなかった私にこれという選択肢をくれたアイちゃんには本当に感謝するしかない。
アイちゃんがいなければ今もまだ悩んでいたかもしれないな‥‥。
「私、戻るよ。 もう一度腕時計を使って」
「私から勧めておいてなんですが、本当にいいんですか? 奈留お姉ちゃんは腕時計の危険さを既に知っているはずなのに‥‥」
「でも、精神の方がまたおかしくなりそうだったら小乃羽ちゃんがまた発明品を使ってくれるんでしょ?」
「それは当然です。 まぁ、戻る時間をわかってさえいれば、同じ時間に行くことが可能ですからね。 今回のようなことはなくなると言ってもいいと思います」
あとは寿命のことだけだろうけど‥‥それはどうすることもできないし、諦めるしかないだろう。
でも、精神が大丈夫ならまだ私としては気持ちが楽だ。
「じゃあ、もう行くよ」
「え、そんなにすぐにですか!」
「善は急げって言うでしょ?」
というよりは気持ちが変わらないうちに行きたいというのが主な理由だ。
「そ、そうですか‥‥じゃあ、腕時計を渡しておきますね。 使い方は覚えていらっしゃいますよね?」
「うん、日にちをセットして戻るんだよね」
「えっと、まぁそれもなんですが、あの血を付けるっていうのも‥‥」
「‥‥あ、あったね確かにそんな条件」
「忘れてたんですね‥‥」
もう、腕時計の説明を受けたのが私の中では何年も前になっているわけで、初期設定をしたことを全くと言っていいほど覚えていなかった。
二度目からの操作は簡単で覚えてるんだけどな‥‥。
「えっと、じゃあ血を少し出せばいいんだよね」
「はい。 針なんかあったらチクっとやっちゃってください」
私は何となくそんなこともあったなと段々と思い出して来たと同時に、一つの違和感のようなものを感じていた。
その違和感はなんなのかは全くわからなかったが‥‥。
「よし、出来たみたい。 じゃあ、小乃羽ちゃん行ってくるよ」
「はい、私も行けるなら後から行きますね」
「うん。 あ‥‥あと、アイちゃんによろしくね‥‥」
「了解です」
小乃羽ちゃんに見送られつつ、私は腕時計の設定をした。
今度こそ私は、兄を救ってみせる‥‥!




