206 私の罪
「もー! 本当に頑固なんだから! アイちゃん少しは優しくなったと思ったのに全然そんなことなかったよ! バカ! AI!」
小乃羽ちゃんは後ろの物陰から覗いていたのか、ぷんすかと怒っていた。
別にAIは悪口じゃないよ‥‥ってそういうことは関係なくて、許されないってことはわかっていたけど行ったんだから私としてはこれが当たり前なんだと思っている。
「別に小乃羽ちゃんが怒る必要ないよ。 本当にそれだけのことを私はしたんだよ。 小乃羽ちゃんもごめんね」
「奈留お姉ちゃん、もう謝らないでください。 私はお姉ちゃんに謝ってもらうためにここに来たわけじゃないですよ。 それにお姉ちゃんがお兄さんを助けたいと思ったからこそ、一人でも戻ったんですから自分の行動にもっと自信をもってください」
「‥‥‥‥うん」
頷きはしたが、私としては本当に裏切ってまで戻るべきだったのかと正直思う。
それに成功していたのからまだしも、私は失敗‥‥いや、最悪の事態を起こしてしまった。
そうなってしまったのは、私がアイちゃんの言うことを聞かなかったからだ。
そう思うとやっぱり申し訳ない気持ちと共に自分がどれだけ身勝手なことをしたのかを実感させられた。
◆◆◆◆◇◆
「それで、これからお姉ちゃんはどうするつもりなんですか?」
「どうするっていうのは‥‥今後のこと?」
「はい」
今後‥‥小乃羽ちゃん達が助けてくれなければ、もうなかったであろう未来を私はどう使うべきなのだろうか。
‥‥いや、兄を殺してしまったのだから、その罪は償うべきだと思う。
どんなにその時の記憶が曖昧だったとしてもだ。
そして私は考えていたことを話そうとしたが、その前に小乃羽ちゃんが私が何を言おうとしているのか気付いていたからなのか、先に口を開いた。
「お姉ちゃん、私はもう一度戻ってみるべきだと思うんです。 こんなことになって何を言ってるんだと思われるかもしれませんが、私は最後までお姉ちゃんにはお兄さんを助けるために頑張ってほしいんです」
「でも、私はしてはいけないことをしたんだよ‥‥だから償わなきゃ‥‥」
「何度でも言いますが、あれは腕時計のデメリットによるものですよ。 お姉ちゃんが普通の状態ならそんなことあり得ません。 それにそれが罪だとしても、お兄さんを助けることが最大の償いになるんじゃないでしょうか? それとも、このお兄さんの亡くなった世界でお姉ちゃんはただ謝り続ける人生を送るんですか?」
「そ、それは‥‥」
でも、また戻ったとして私は兄を救えるのだろうか。
また無意味に戻るだけになってしまうのではないか、そう思うと私はどうしても戻るということが怖かった。




