204 二人に対して私は‥‥
「じゃあ、そのタイムマシンは今何処に?」
話を聞く限りはそこそこ大きいのだろうし、置く場所なんてあったのだろうか‥‥。
蕾ちゃんの家に行けないのなら尚更場所なんてないんじゃ‥‥。
「師匠のマンションの屋上にありますよ。 こそっと置かせてもらえました。 もちろん無許可ですよ♪」
「いやいやそんな当たり前みたいに言われても‥‥」
まぁ、他に置く場所がないのは確かだろうし、ある意味蕾ちゃんの発明品でもあるわけだからそれでいいのかもしれないけどね‥‥。
「あ、お姉ちゃん見に行きますか? 体は大丈夫ですよね?」
「そ、それは大丈夫だけど‥‥今はやめておくよ」
「そうですか‥‥」
小乃羽ちゃんのこととか色々あったから頭から離れていたけど、私はそんな浮かれていい人間ではないんだ。
『それほど見たって楽しいものでもないでしょ』
小乃羽ちゃんではないことが聞こえてきたことに一瞬ドキッとしたが、その声はとても聞き覚えがあり、一人しかいない。
「あれ? アイちゃん、タイムマシンを見守ってるって言ってなかったっけ?」
『透明化装置を使って、透明にしておいたから別に私がいる必要はないわよ。 それにこっちも少し気になったしね』
アイちゃんはチラッと私の方を見て、すぐに小乃羽ちゃんに視線を戻した。
「そうなんだ。 じゃあ、特に何処かに隠すとかする必要はなさそうだね」
二人が改めて揃っているところを見て、私はこの二人にきちんと謝れるのは今しかないと思った。
「あの‥‥小乃羽ちゃん、アイちゃん‥‥本当にごめんなさい!」
「え、急にどうしたんですかお姉ちゃん。 別に謝られることはなにも‥‥」
「ううん。 二人の言ったことを勝手に破って、勝手におかしくなって、普通なら見捨てられてもおかしくないのに‥‥それなのに‥‥」
「お姉ちゃんが悪い訳じゃ────」
小乃羽ちゃんが言おうとした時、アイちゃんが言葉を被せてくる。
『謝っても私は許すつもりはないわ』
「ちょっ! アイちゃん!? 奈留お姉ちゃんは腕時計のせいでああなってただけであって、お姉ちゃんが悪い訳じゃないってアイちゃんもわかってるはずでしょ!」
『そうね。 でも私達といた時点ではまだ自分がどうするべきかの判断くらい出来たはずよ。 私は裏切った人間を信用することは出来ないわ』
「‥‥もう、この意地っ張りAIは!」
いや、正直アイちゃんの反応の方が正しいんだろう。
兄のあの現場も見たはずなのに普通に接してくれる小乃羽ちゃんが優しすぎるのだ。
‥‥でも、自分が悪いってわかっているけど‥‥やっぱり心は少し寂しさを感じていた。




