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62 私の想い

信くん視点です。

『こんばんは、磨北まきた────祈実きさねさん』


 え? 何ってるんだこの人は‥‥。


 携帯のスピーカーから聞こえてくる声は、機械音のような声で、何かしら変えているようだった。

 なんだか少し怖くなり、間違い電話だと言おうと思った。


「いえ、人違いだと思いますよ」


『あはは、そうきましたか。 ですが、人違いではありませんよ。 磨北まきた祈実きさねさん。 いえ、今は”磨北まきたしんさん”とお呼びすればよろしいので?』


「‥‥え?」



 ‥‥この人、僕が‥‥いや私が誰にも言ったことがない秘密を知ってる!?




 ────私である”磨北まきたしんの中身が磨北まきた祈実きさね”だってことを。




 いや、まだちゃんとした確証はない。


磨北まきたしんと言うのは僕ですが、今は、というのがよくわからないんですが。 それにあなた一体誰なんですか?」


 声が変えられているからか、性別さえもよく分からない。


『いいえ、あなたは知ってるはずですよ。 その理由も‥‥私のことも』


「あなたのこと‥‥?」


 ‥‥いや、こんな人私は知らない。

 それに情報が無いんじゃ知りようがない。


『それはまぁいいでしょう。 それにしてもどうしたら正直になっていただけますかね‥‥あ、少し昔話をしましょうか?』


 昔話って一体‥‥?

 そもそも、この人は何が目的で私に電話なんてしてきたんだ。


「な、なんですか‥‥」


『それは────』


 この人が言った言葉を聞いたとき、私は認めざるを得なかった。

 私が、前世の記憶を持っていることを知っていて、尚且つ私の前世を知っていることを‥‥。




 ◇◆◇◆◇◆




『お認めになってくださって、本当に良かった。 私は磨北まきたしんさんというあなたではなく、磨北まきた祈実きさねさんというあなたとお話ししたかったもので』


「そ、それで、目的は何なんですか?」


『あはは、特に何かしてもらうわけではありませんよ。 聞きたいことが二つほどあるだけですから』


 聞きたいことが二つ?

 前世の事とかだろうか。


「聞きたいこと?」


『えぇ、そうです。 一つは夕闇ゆうやみりくさんのことです』


 え、どうして?

 聞く理由がわからない。


「‥‥夕闇ゆうやみくんがどうかしたの?」


『今はどう思っているか知りたくなりましてね』


「な!?」


 な、何をいきなり、そそそんなことを。


『どうなんですか?』


 ‥‥渋っていたが、このままではらちが明かないと思い、話すことにした。

 それに自分でもおかしいとは思うが、なんだか信用できるような気がした。


「‥‥‥‥前世では好きでした。 今日、彼女さんが隣にいて、前世じゃないにしても私は楽しそうな夕闇ゆうやみくんが見れて嬉しかったです。 私はあまり笑顔にしてあげられなかったですから」


『そうなんですか』


「少し、嫉妬しちゃいましたけどね。 けど今の私は男ですから。 隣にいれないのは当然です。 夕闇ゆうやみくんが幸せなら私は何も言うことはありませんよ」


 もう一度夕闇(ゆうやみ)くんと会えたんだ。

 それ以上を求めるなんて私には出来ない。

 それに、私が好きなのは前世の夕闇ゆうやみくんだから。


『じゃあもう一つの質問です。 その妹の夕闇ゆうやみ奈留なるさんのことをあなたはどう思いますか?』


 夕闇ゆうやみさん‥‥。

 さっきまで一緒に遊んでいた女の子。

 なんでそんなことを聞くのか私には疑問だったが答えた。


「正直、よくわからなくなったんです」


『わからないとは?』


「前世で、色々な話を聞いて私はいい印象は持ってませんでしたし、今世で出会った時もずっと疑ってたんです。 でもよくわからなくて」


 もしかするとここでも夕闇ゆうやみくんが殺されるかもしれないと、考えた。

 だから今度こそ何かあれば、近くで見張って妹さんを止めようと。


 けど、会ってみると印象が全然違っていた。

 私はもうどちらを信じればいいか、わからなくなってしまった。

 あの子を疑うのは間違いなのかもしれない‥‥だけど前世の記憶が彼女を疑う。

 私は彼女をどうしても好きにはなれない。


『大体わかりました。 ありがとうございます』


 本当に二つの質問だけ?

 こんな質問で、何がわかるというのだろうか‥‥。


「本当にこれだけなんですか?」


『はい。 収穫はありましたから。 それではまたどこかで会いましょう。 さようなら磨北まきた祈実きさねさん───』



 すると、通話が切れたことを知らせる電子音が私の耳元にうるさく鳴り響いた。

 本当に誰だったんだろう‥‥。


 疑問に思いながらも、私はまだ帰り道の途中にいることを思い出し、家に向かって歩きだした。

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