表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生して前世の俺の妹になりました  作者: ニャンネコ大尉
あったかもしれない、そんな世界で───
639/780

198 終わりと始まり

※注意 この話の前半は前話と同じです。 なので、話の流れがわかる場合は飛ばしてください。



「さっさとしなさいよ、ゴミが」


 のろのろと料理を作っているその姿に私は苛立ちを隠せないでいた。

 それに最近になって見るようになった気に食わないその目が私を更にイライラとさせた。


「‥‥‥‥そんなに言うならお前が作ればいいだろ」


「は?」


「そんなに言うならお前が作って、勝手に食えばいいだろ! 俺はお前の家政婦じゃないんだぞ!」



 こいつ、今私に言ってる?


 ‥‥‥‥偽物の分際で‥‥。

 私のお兄様は怒ったりなんてしなかったし、家事だって自分から好きでやっていた。


 それに比べてこの偽物は‥‥ふざけるなよ‥‥。


 私は完全に怒りでなにも考えることが出来なくなっていた。


 初めから喧嘩をする関係ならきっとこんな気持ちにはならなかっただろうが、元々なにも言わなかった人が急に反抗するようになったということが癪に触った。


 私は完全に自分を見失っていた。




 ◆◆◆◆◆◆




 その怒りは夜中になっても全く冷めることはなく、逆に更に怒りが増していた。


 イライラとしていた時ですら、私は自分一人で気持ちを沈める訳ではなく兄に当たり散らして発散していたが、今はそんなことをしてもこと怒りを抑えることが出来そうにない。



 私はふとベッドから体を起こした。



 無意識に私は階段を下り、一階のキッチンの方へと向かっていた。


 そして、キッチンでとあるものを手にした後、私は階段を上がり始める。

 自分の部屋の扉を通り過ぎ、私はその隣の部屋の扉の前に立った。



 扉を開けると、静かにベッドに横になっている兄の姿が見える。

 私は兄のベッドの側まで歩いていく‥‥。



 どうせもうすぐ死ぬんだから、いつ死んだって同じ‥‥。

 私が何もしなくてもどうせいなくなるんだから、最後は私のために死んで‥‥。



 私は手に持っていた包丁を兄に突き刺した。




 ◆◆◆◆◆◇





 刺す前は何とも思わなかったが、刺してすぐの今、私は何処か違和感のようなものを感じていた。


「‥‥え?」



 兄の部屋の壁掛け鏡には何故か涙を流す私の姿が映っていた。


「どうして‥‥涙なんて‥‥────っ!」



 私はその瞬間、我に帰ったかのように頭が冷えた。


 自分がどれだけ兄のことが好きで、何のために今まで頑張っていたのかも全て、封じ込められていたものが飛び出したかのように私は急に思い出した。



 何故なのか理由はわからない。

 だが、私は無茶をして腕時計を使う前の精神状態に戻っていた。


 逆に心が壊れた後の記憶は曖昧になっていて深く思い出すことが出来なくなっていて現状何が起こっているのかを私は理解することが出来なかった。



「私は今まで何を‥‥‥‥え‥‥」


 目の前には何故か胸に包丁が突き刺さっている兄と、何故かその隣で突っ立っている私。


 こんな状態を見れば何があったかなんて、誰だって簡単に理解できる。


「‥‥私が‥‥やったの‥‥‥‥?」


 嘘だって思いたかったが、手にべっとりと付いている兄の血が私がやったのだと物語っていた。


「‥‥いや‥‥いやっ!!」


 兄が亡くなったところは一度見たことがあった。

 でも、あれは事故によってだ。 私が殺すなんてことはなかったし、こんなこと普通ならするわけない。


 私が兄を‥‥‥‥。




 私は恐る恐る兄に触れる。


 今から救急車を呼べば助かるんじゃないかと思ったが、まだ冷たくなっている訳ではないが、こうなってしまった以上、兄を助けることは出来ないのだろう‥‥。


 一度、こうなってしまえばどんなことをしようとも兄は死んでしまうんだから‥‥。





 ‥‥‥‥いやだ。 諦めたくない。


 私が殺してしまったこということが、今までのどんな形であれ兄を助けたいと思う気持ちから、目の前にいるこの兄を救いたいという気持ちになっていた。



 でも、私には兄を助ける手段を持たない。

 私は無力でそして弱く最低な人間だから‥‥。


 他人の力を借りるぐらいしか私にはなかったが、今はそれすら私にはない。



 何も‥‥‥‥いや、まだ私には一つ残ってるじゃないか‥‥。





 私は自分の腕に着けていた腕時計を兄の腕に巻き付けた。

 そして、少しすると腕に着いていた腕時計は初めから無かったかのように何処かへ消えていった。


 起動したということは、ちゃんと出来たのだろうか‥‥。

 私にはもう確かめる手段はないのでわからないが、成功していてほしい‥‥。




 そして私は罪を償うために、今後の人生を使おうと心に決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ