192 見つけてみせる!
お兄様が出かけたその日から、お兄様が家に帰ってくることはなかった。
どういうことかというとお兄様がその日に事故で亡くなったのだ。
私は警察からの電話で知った。
磨北さんや森田先輩の連絡先を交換していないことから、二人から連絡されることなどはなく、かなり事故から経過してから知らされた。
アイちゃんがいてくれたから、どんな状況だったか、すぐにわかっていたけど、自分だけだとやっぱり色々と無理があるようでほとんどどんな状況で亡くなったとかはわからなかった。
改めてアイちゃんがどれだけ私のために色々としてくれていたのかに気づいて‥‥そして裏切ってしまったことを心底後悔した。
そして、お兄様が亡くなったことについては正直以前よりも悲しいとかそういう感情はなかった。
距離が離れていたからなのかもしれないが‥‥。
でも、お兄様が生き続けてほしいという気持ちは今でも変わっていないので、私はもう一度戻る決意をした。
‥‥次こそは兄妹仲良く出来て、変えることができたらいいな‥‥。
◆◆◆◆◆◇
『小乃羽、次行くわよ』
もう何度目になるかわからないくらい私達は同じ事を繰り返していた。
正直、戻れるところには片っ端から戻ってはいるが、未だに夕闇さんが戻ったと思われる時間すらわかっていない。
「‥‥ねぇ、アイちゃん。 もしあと何度か戻って奈留お姉ちゃんを見つけられたとして、そのお姉ちゃんは無事なのかな? もう取り返しのつかないくらい精神が駄目になってるとかないよね‥‥?」
『そんなのわからないわよ。 でも確実に私達と一緒にいた頃と別の人だと言っていいんじゃないかしら。 一緒にいたときですら変化があったんだから』
出来ればあれ以上酷くなっていないことを祈るしかないが‥‥。
「‥‥アイちゃん、やっぱりお姉ちゃんを探すのよりも、まずは師匠が使っていた精神安定装置をお姉ちゃんにも使えるようにする方がいいんじゃない?」
『だからそれはマスターも作ろうとはしてくださっていたけど、無理だってわかったじゃない。 それにあくまでも優先すべきは腕時計の回収よ』
「でも‥‥」
小乃羽がかなり落ち込んでいる姿を見て、私は少しだけ罪悪感のようなものに駆られた。
『‥‥‥‥もう! わかったわよ! でも、少しだけだからね』
このまま無理矢理諦めさせて、小乃羽が戻らないと言い出したら面倒だ‥‥‥‥という言い訳を胸に秘めながら私は小乃羽のお願いを聞き入れることにした。
「うん! 絶対に手がかりを見つけてみせるよ!」




