188 自暴自棄
目覚めた時、私は自分が何をしているのか、今いる場所が何処なのかわからなかった。
「‥‥‥‥っ!」
先程から酷い頭痛はもちろんのこと、うまく体が動かせないし、言葉もうまく発することができない。
元々、限界だったからなのかもしれないが、ここまで酷くなるものだとは思わなかった。
いや、酷くなっているのは少し戻りすぎたからかもしれない。
私は全てを変える決意で、何週間、何ヵ月ではなく、何年も前に戻ることにしたのだ。
危ないと言われていたんだから、いくら戻っても変わらないだろうという、完全に自暴自棄になっていて、かなり無茶をしてしまった。
別にここに戻りたいといった時間があったわけではなかったが、同じような人生になってしまえば戻った意味がないので、小学生の頃の私が自分の人生のターニングポイントだと思う辺りに戻ろうと思った。
兄と仲良くなったきっかけでもある、あの通り魔の出来事。
あの時からお兄様と仲良くなったと言ってもいい。
だから私はその頃からいい妹に変わっていけば、お兄様が亡くなるのを回避出来るのではと考えたのだ。
もっと仲良く、もっと信頼してくれるように‥‥。
お兄様は私が絶対に助けるから‥‥‥‥私が絶対にね‥‥。
◆◆◆◆◆◇
『小乃羽、準備はいい?』
「いつでも大丈夫だけど‥‥でもアイちゃんどうする? 何処に戻ったからなんてわからないよ?」
時間の設定をしようとしていた小乃羽に私は改めて言う。
『だから手当たり次第に探すだけよ。 どんなことがあっても、腕時計の回収をしないと』
あれが、私の干渉できない場所にあるというのがどれだけ危ないか‥‥不安がどんどんと押し寄せてくる気分だ。
きっと、初めから腕時計なんて夕闇さんに使わせるべきではなかったのだろう。
今更になってそんなことを思ってしまう。
私の考えの甘さと、マスターの友人ということで特別扱いをしすぎたかもしれない。
元々の私はこんな甘い考えを持つことなんてなかったのに‥‥。
「アイちゃん、お姉ちゃんに怒ってる?」
『確かに思うところはないわけではないわね‥‥』
「もし、お姉ちゃんに会えたとしてもあまり怒らないであげてね?」
今はそんな話をしている場合ではないと言いかけて、そんなことをいう時間ももったいないと思って、言おうとしていた言葉を飲み込んだ。
『‥‥考えておくわ。 じゃあ小乃羽、行くわよ』
「うん、奈留お姉ちゃん、無事だといいんだけどな‥‥」
そして私と小乃羽の二人で腕時計を使った。




