182 弱いまま‥‥
あと一回で終わり‥‥。
蕾ちゃんの家から帰る時、私の頭はそればかりだった。
結局、先程のアイちゃんの言葉に止むなく頷いた私は、もう失敗が許されないという重圧に押し潰されそうになっていた。
あのお兄様のいない、私にとっては死ぬよりも苦しい日々がまた繰り返されるのかと思うと、どうやっても耐えられる気がしない。
普通ならその辛い現実を乗り越えられたりするのだろうが、私には出来る気がしない。
腕時計を使ったからだろう。 きっと前の私よりも今の方が弱くなっていると思う。
‥‥いや、初めだって自殺したんだから、変わらずに弱いままなのかもしれない。
私は周りの人がいないと、本当に何にもない人間なんだな‥‥。
◆◆◆◆◇◆
私はいつの間にか玄関の扉の目の前にいた。
最近は何か考え事をしているせいで、無意識みたいなことが多いな‥‥。
家にはお兄様がいて、今日も私を出迎えてくれる。
それが当たり前だった。 当たり前だったのに‥‥‥‥。
もうこの当たり前が絶対にないものになるのが怖い。
あと一体、私の人生でお兄様がいてくれるのはどのくらいの期間になるんだろうか‥‥。
‥‥駄目だ、今失敗した後のことを考えるなんて。
もうそうなる未来しか見えなくなってくる。
私があと一回で成功させればいいんだ。
どこか無理だとわかっていても無理矢理に自分の心を騙して、私は玄関の扉を開けた。
◆◆◆◆◇◆
「どうした、奈留。 何かあったか?」
「‥‥いえ、何でもないです。 それよりお兄様、今日はお兄様が晩御飯作ってくれませんか?」
「ん? あぁ、それはいいが、自分で作るっていつも言う奈留にしては珍しいな」
「‥‥お兄様のご飯が食べたいなぁってふと思ったんです」
「そうか。 それは嬉しいな。 よし、今日は一段と張り切って作るよ」
これで最後なのかもしれないんだから、今日くらいこういうことがあってもいいのではないかと思い、お兄様に料理をお願いすることにした。
本当は別に自分で料理なんかせずに、お兄様のご飯をずっと食べていた方が私にとっては幸せだっただろう‥‥。
そこまでとはいわずとも、こんな少しの我が儘なら‥‥。
はぁ、また後ろ向きな考えになってる。
それに、自分が幸せになればそれでいいなんてことはないはずなのに‥‥。
「お兄様、やっぱり晩御飯手伝わさせてください」
「疲れてたりするんだったら、やらなくてもいいんだぞ?」
「いえ、私自身の為にしたいんです」
「そうか。 なら一緒に作るか」
「はい!」
私はまだ諦めちゃ駄目なんだ‥‥。
4月1日、エイプリルフールの朝に投稿した話を気付いていない人がいるかもという感想がありましたので‥‥前回のエイプリルフールの続きが気になるという方は是非お読みいただければと思います!
それと最近五時半に投稿するのが難しくなっていて、もしかすると五時、丁度にする可能性があるかもしれません。
こちらの都合で申し訳ございませんが、よろしくお願いします。




