180 頼らない
『今回も事故でした。 でも、前回と違うところは磨北さんが無事ということですね。 一緒に乗っていた森田さんも死ぬほどの怪我はしていないようです』
三人でバスに乗っても、私と森田先輩では結果が違うんだ‥‥。
いや、お兄様と磨北さんが付き合っていなかったからということも‥‥いや、お兄様が両方亡くなっているんだから、比べても意味がない。
「付き合わせるのを遅らせても、駄目なの‥‥それとももう少し進展を遅くしなくちゃならなかったとか‥‥」
考えられるだけでも色んな事が思い浮かぶ。
話すことが違うだけでも、少し変わるんだから、もっと違うことをしておけばもしかしたら‥‥。
『夕闇さん、一度帰られますか? それとも、すぐにでも戻られますか?』
どうしよう‥‥でも、このままいても結局は後ろ向きな気持ちになるだけだ。
それだったら、もう一度‥‥。
『でも、覚えておいてほしいのが、もうかなり夕闇さんは戻られていて、あと戻れる回数も少なくなっていることを。 戻れるのは無限ではないんです』
「うん‥‥わかってる」
この時間で蕾ちゃんに教えてもらったことだ。
もうきっと私の寿命もかなり減っているのではないだろうか。
今更かもだけど、それならもう少しなんて、躊躇している暇なんてないんじゃないだろうか‥‥。
「戻ろう、すぐに」
私はまた腕時計を使って時を遡った。
◆◆◆◆◇◆
そこから私はまた何度も戻った。
さまざまな可能性を試して‥‥失敗して‥‥。
結果的にお兄様と磨北さんをあれ以上遠ざけることは出来なかったし、お兄様達がお花見を学校などで決めてしまっている以上、やることを変更するということも出来なかった。
そして、一つ私はあることを決めた。
それは蕾ちゃんに頼らないということ。
蕾ちゃんに話せば手助けをしてくれて、きっと今よりも良い結果になるだろうけど、でも私は蕾ちゃんには自分のために時間を使ってほしいと思えたのだ。
だから、アイちゃんや小乃羽ちゃんにも蕾ちゃんには言わないようにお願いしておいた。
あと変わったことといえば私自身のことだろう。
腕時計のデメリットが、より実感し始めたといっていい状態になった。
どういうことかというと、今まではなんとも思わなかった少しのことでイラッとしたりとか、何だか自分が自分でないような感覚‥‥まぁ、今のところは抑え込めているとは思うけど‥‥。
頭痛なども更に酷くなったし、本当にもうそろそろ危ないところまできているのかもしれないな‥‥。




