175 無力な私は‥‥
図書館での勉強会の次の日、私は報告も兼ねて蕾ちゃんの家に向かっていた。
時間を戻す前は毎日行っていた蕾ちゃんの家も、蕾ちゃんが倒れていないこともあり、ずっといるようなことはなくなった。
なので、ここ二、三日は蕾ちゃんの家に行って、何かしたりなどはなく、基本的に自分の家にいる。
お兄様の側にいることも大切なことだと思うしね。
そして、私は蕾ちゃんの家に着き、玄関の扉を開けるとアイちゃんが立っていた。
「おはようアイちゃん、蕾ちゃんはどうしてる?」
『体調が悪いようでしたので、今は眠っていらっしゃいます』
「体調が悪い‥‥? それって‥‥」
もしかして、一回目から続いている意識不明になる前兆なんじゃ‥‥。
『あ、いえ、腕時計のデメリットの方ではなく、ただ単に働きすぎてるんですよ。 私や小乃羽が止めても全然聞きませんし‥‥』
ひとまずはよかったが、でも体調が悪くなるまでやるなんて‥‥。
もし、それで倒れるのが早まったりしたら‥‥。
「どうしてそんなに無理を?」
『やっぱり、自分があまり時間がないことを知ったからではないでしょうか。 やっぱり色々とやりたいことがあったんだと思いますよ』
そうだよね、もしもうそろそろ自分が死んでしまうかもしれないってなった時は私だってやり残したことを無理にでも片付けようとするかもしれない。
「そっか‥‥でも、今の体調が悪いのは関係ないかもだけど、戻る前の出来事がそのまま起こるとしたら、そろそろ‥‥だよね?」
『はい、少しの誤差はあったとしても、やはり起こることだと思います』
戻ってきたことで改めて蕾ちゃんの優しさや大切さがわかって‥‥でもまた元気な蕾ちゃんが見られなくなるというのは何だか一回目よりも辛いかもしれない。
気持ち的には蕾ちゃんも助けたい。
蕾ちゃんの前例があるように腕時計を使えばもしかしたらそれが出来てしまうかもしれない。
‥‥でも、お兄様のこともあって二人を助けるなんて、そんな都合のいいようになるだろうか‥‥いや、無理だろう。
お兄様一人も現状救えていない私にはそんな考えを持つ資格はない。
『夕闇さんが何か気に病むことではないですよ。 マスターは後悔はしているかもしれませんが、それでも夕闇さんとのこの時間はとても楽しそうで、やり直してほしいなんて思っていらっしゃらないはずですから』
「うん‥‥」
アイちゃんにそう言われて、私は蕾ちゃんが倒れるその時まで、蕾ちゃんの前では笑顔で楽しくいられるようにしようと心に決めた。




