174 本を読んで‥‥
勉強を長くしても、主に森田先輩がダラけだしてしまうので、少し休憩を挟むことになった。
休憩の間は図書館ということもあり、特に読みたい本があるわけではないが、ブラブラと歩き回りながら本棚を見ていて、ふとお兄様の方を見ると、真剣に本を読んでいるのが見えた。
よく見ると小説を読んでいるようだ。
お兄様が物語のあるものを読むのは何だか珍しいような気がする。
「お兄様、何読んでらっしゃるんですか?」
私は気になって、本を探すのを中断して、お兄様の元に行った。
「あぁ、サスペンスものの小説だな。 磨北から進められて何となく読んでみようと思ったんだよな」
「そうなんですか」
お兄様が読んでるのは珍しいと思ったが、磨北さんの影響でしたか。
そういえば、磨北さんも弟さんの影響で読んでるって言ってたな。
「あんまり、小説を買ったりとかは今までなかったが、これからは色んなのを読んでみるのもいいかもしれないな」
「じゃあ、私も面白い本があったらお兄様に教えてあげますね」
「あぁ、そうしてくれ」
そういうと、お兄様は小説に視線を戻して、改めて読みだした。
でも、そうか。 そういう本の話題なんかがあって、もしかしたら二人の距離が近付き始めたのかもしれないな。
確かに読んだ後って、色々と話せるもんね。
それに誰かと面白さを共有するの楽しいだろうし‥‥まぁ、私はそんな友達いなかったわけだけど。
たまに蕾ちゃんに本を薦めたりするけど、蕾ちゃんにはあまり合わないみたいなんだよね‥‥。
私は何度も読むタイプだから知っている本も少ないわけだけど‥‥。
でもお兄様と本のお話をするのって楽しそうだな‥‥磨北さんともなにも悪いことの起こらない世界になったら、どんな本が好きとか話したりしてみたい。
一回目はあまりそういう話を出来なかったし。
もしあんなことがなかったら、三人で本の話をしたりしたのかな‥‥?
そして、私はその後もお兄様達が二人きりにならないように監視しつつ、勉学に励んだ。
◆◆◆◇◆◇
奈留ちゃんが図書館で勉強をしていたとき、アイと私はどうにか、過去の記憶を頼らずとも精神を安定させる発明品を開発出来ないかと模索していた。
しかし、全く開発の糸口すら掴めず、長々と悩んだ末、ほんの少しだけ休憩をとることにして、その間、奈留ちゃんについての話になった。
『そういえば、今までずっと夕闇さんにはマスターが勉強を教えていらしたから、それがなくなって少し寂しいですか、マスター?』
「どうしたの急に。 う~ん、まぁ、少しだけでござるよ。 でも、奈留ちゃんにこれからもずっと教えることは出来ないでござるから、ある意味では良いきっかけなのかもしれないでござる」
『‥‥そうですか』
そういうと、その後、特別会話もなくまた作業に戻った。




