172 勉強をして‥‥
「勉強を教えてほしい? 珍しいな、奈留がそんなこというなんて」
「そ、そうでしょうか?」
別に教えてもらうこと自体は蕾ちゃんにいつも教えてもらっているので、珍しいというわけではないとは思うが、お兄様に教えてもらうのは私としてはかなり珍しいかもしれない。
面倒に思われたらとか、お兄様にはあまりそういう自分を見せたくなかったとか、色々な理由はあるけれど‥‥まぁ、お兄様に好意を抱いてもらうという目標がなくなった今となってはあまり気にする必要はないかもしれないな‥‥。
「あぁ。 まぁ、俺は構わないけどな。 勉強を教えてほしいなんて頼まれて断る理由はないし、奈留が頼ってくれるのも嬉しいからな。 じゃあ、早く帰ってこれる日は早く帰ってくるよ」
「ありがとうございます!」
よし! これでこれから先、磨北さんが勉強を教えるという日も少なくなるはず!
以前から入っている約束などはもう無理かもだけど‥‥。
しかも、後々、二人の距離が近付き始めて、家で勉強会をするということになっても、二人の間に入る理由にもなる。
後のことも考えて、二人の時間を出来るだけ少なくするのは今のところ、これしかないと私は思う。
そして、お兄様にお願いをしてから数日が経過した。
◆◆◆◇◆◇
私は今、蕾ちゃんの家に来ていて、胸の内を吐露していた。
「どうしよう、蕾ちゃん!」
「ど、どうかしたんでござるか、奈留ちゃん!?」
「全然、成果が出ているのかわからない段階で、勉強だけが物凄い出来るようになっちゃった! このままじゃテストの順位で二位も夢じゃないよ!」
「‥‥いやいや、良いことでござるよ、それ。 なんで嫌そうなんでござるか」
「だって、勉強出来るようになっちゃったら、お兄様に教えてもらう必要なんてなくなっちゃうんだもん!」
お兄様は教えることに慣れているからか、とてつもなく教えるのが上手くて、ぐんぐんと私の脳が勉強を吸収していったよね。
もう、先生より先生してたね。
そういえば‥‥森田先輩もお兄様に教えてもらっているのに、なんであんなに成績悪いんだろう‥‥まぁ、あれは本人のやる気の問題か‥‥。
『なら、出来ないフリをすればいいんじゃないですか? そうすれば、継続していくと思いますが?』
近くで聞いていたアイちゃんがそんな提案をする。
「いや、確かにそうするべきなんだろうけどね‥‥でも、お兄様が教えてくれてるのに適当になんて私出来る気がしないよ!」
『命かかってるんですから、それぐらいしてくださいよ‥‥』
うっ、確かに‥‥。
「まぁ、今は予習で先の勉強をしたりして、期間を伸ばす方が奈留ちゃんには合ってるでござるな」
「うん、そっちにしよう」
嘘ついてもお兄様にバレちゃうし、先のことも大事だからね。




