167 使った理由
つまりは蕾ちゃんもこの腕時計を使ったってことだよね?
「作る段階で自分を使って実験してたってこと? いくら好奇心が強いからって自分を実験台にして‥‥」
「違うんでござるよ、奈留ちゃん。 確かに一度は実験感覚で使ったりもしたんでござるが、それとは別に明確な理由があって、この腕時計、物忘レンくんを使っていたんでござる」
明確な理由?
「それってどういう‥‥」
「私もね、奈留ちゃん。 それが我が儘だとわかっていても、助けたい人がいたんだよ」
え、つまりは‥‥今の私と同じ事をしていたってこと?
「‥‥死んだ人を助けようとしたってことでいいの?」
「うん、その通りだよ」
蕾ちゃんのその言葉に私はかなり驚いた。
そんな感じ全然なかったから‥‥。
そして、私はその話を聞いたとき、一つどうしても聞きたいことができた。
「それは‥‥成功したの? それとも、失敗したの?」
もし、成功をしているのならその方法を知ってお兄様を助けたい。
でも、失敗していたのなら‥‥それは蕾ちゃんをもってしても無理だったということだ。
私がお兄様を助けるという可能性がないに等しいということになる。
「ある意味では成功と呼べるのかもしれない、でも私にとっては失敗‥‥かな?」
「どういうこと? 助けることは出来なかったの?」
「ううん、出来たよ。 でもね、本当に偶然でどうして助けることが出来たのかわからなかった。 それにその時はもう体が限界で、あれ以上検証することが出来なかった」
つまりはデメリットで、それ以上戻ることが出来なかったってこと‥‥?
でも、蕾ちゃんもわからないのなら、私がそれを実践することは出来ない‥‥。
「でも、助けられたんなら成功といっていいんじゃないの?」
「奈留ちゃん、さっきデメリットの話をしたよね? つまりは私は体を酷使しすぎたんだよ。 だから成功かといわれたら違うと思うんだ」
体を酷使する‥‥それってまさか、あの意識不明になったのと関係しているんじゃ‥‥。
「倒れたのってつまりは‥‥」
「うん、体が持たなかったんだ。 そんなデメリットに気づく前に、もう私は腕時計をその人を助けるために使いすぎたんだよ。 だから失敗なんじゃないかと思ってね」
ずっと意識不明だったのはそれが理由だったってことか‥‥。
つまりは私も使い続ければ、蕾ちゃんと同じで倒れてしまうってことだよね‥‥。
「だから、蕾ちゃんは私を止めようとしてくれてるんだね」
「‥‥私と同じようにはさせられないよ。 いくらそれで助けられたとしても、奈留ちゃんが死んじゃったら意味がない」
確かに、そうかもしれない‥‥でも‥‥。




