166 デメリット
デメリットと言われて、今すぐに思い付くことは、ひとつあるけど‥‥。
「それってあの頭痛のことじゃないの?」
あの頭痛がどんどん痛くなっているのは確かだし、逆にいえば、それ以外に思い付くことがない。
「確かにあれもデメリットの一つでござる。 まぁ、それも関係はしているでござるが、私が言っているデメリットはそれとは比べ物にならないものでござるよ」
「比べ物にならない‥‥?」
蕾ちゃんの深刻そうな表情に私は冷や汗をかく。
「この腕時計は使えば使うほど、寿命を削るというデメリットが────」
寿命を‥‥削る?
◆◆◆◇◆◇
「別に結果的にそうなるだけで、本当は別に理由があるんでござるが、今は分かりやすくそういう認識でいいでござる。 つまり、この物忘レンくんを使えば使うほど、どんどんと自分が壊れていき、生きられる時間が少なくなるってことでごさる」
そんな‥‥‥‥いや。 こんな凄い発明品が代償なしにいくらでも使えると思い込んでいた私がバカなのだ。
いくら蕾ちゃんの発明品でも、この発明品の性能は飛び抜けすぎている。
「‥‥あ、もしかして、アイちゃんが何もかも捨てる覚悟があるか聞いたのって‥‥」
『すみません、全てを話してよいものなのか判断出来ませんでしたので、使う覚悟のあるなしだけを聞かせていただきました』
「それであの時‥‥」
いや、アイちゃんはちゃんと言ってくれていた。
私は自分の命もかける覚悟で来ているのだから、何も問題はないはずだ。
「奈留ちゃん、その話を聞いて、まだやろうなんて考えているんでござるか?」
「‥‥うん、覚悟はもう過去にしてきたから」
今さら我が身が大事だからと引き返せないし、そもそも今回で助けられる可能性だってあるのだ。
「後悔するよ、奈留ちゃん。 それでも‥‥?」
「うん」
蕾ちゃんは私のために止めてくれているんだろう。
‥‥きっとお兄様が亡くなったとき、蕾ちゃんが私の隣にいて励ましてくれていたら私はあの時間にいたままだったかもしれないな‥‥。
「奈留ちゃんは本当に頑固だね。 はぁ、私に止めるだけの時間があれば絶対にそうはさせないんだけどな‥‥」
「それにまだ私がすぐに死ぬって決まったわけじゃないし。 そもそも、蕾ちゃん。 そんなデメリットが絶対にあるってどうして言い切れる‥‥の‥‥?」
言っている最中に気付いてしまった。
そんな寿命を削るなんてこと、作っている時にわかるものなのかと。
誰かがやらないとそんなのわからないんじゃないのか‥‥?
「私が実際にそうなる直前まで体験したからだよ、奈留ちゃん」




