163 扉を開けば────
気持ちを新たに、私はまた時を巻き戻す腕時計を使った。
‥‥使ったはずだった。
しかし、私は今、真っ暗な空間に一人で佇んでいた。
何処なんだろうとも思ったが、何となく今の状況に当てはまることがある。
たぶんこれは夢だ。
ほっぺをつねっても全然痛くない。
そうなると、今の状況に何故なっているのか、何となく理解することが出来た。
何時ものごとく腕時計を使ったことにより頭痛がきて、今回は痛みが凄すぎて、一瞬で気絶してしまった為に今私は夢を見ているんじゃないかな?
‥‥いや、気絶した時に夢って見るのかな?
まぁ、今見ている訳だし、そこは気にしないでおこう。
でも、これってどうやったら現実に戻るんだろう‥‥。
『‥‥‥‥』
え、今なにか声がしたような‥‥。
それになにかを言って‥‥。
『‥‥‥‥』
誰? 誰なの? それに何でそんなことを‥‥。
『‥‥‥‥』
やめて! そんなこと言わないで!
私は‥‥そんな、そんなことしない、違う‥‥違う!
『‥‥‥‥‥‥』
もうお願い、黙って───!!
すると、真っ暗だった空間が一瞬で別の空間に変わる。
その場所は私のよく知る場所だった。
しかし、よく知る場所の光景のはずなのに、おかしいことがひとつある。
何なのこの光景‥‥。
そういえば、この前の夢でもこんな‥‥。
私‥‥私──────
◆◆◆◇◆◇
私は勢いよく自分の部屋のベッドから起きた。
その瞬間、私は手で頭を抑えた。 まだ頭の痛みがかなり残っていたからだ。
「かなり時間が経ってそうだけど、まだ痛いんだね‥‥いてて」
一つ前まではまだ気絶して起きた後は、痛みは引いていたんだけどな‥‥。
「なんか怖い夢だったなぁ‥‥あれ? そういえば、どんな夢だっけ?」
さっきまで本当に衝撃的だったはずなのに起きたらすぐ忘れるなんて‥‥。
でも、忘れるってことはそれほど大事なことじゃなかったのかな?
って、今はそんなこと気にしてる場合じゃないや。
戻るときは全部蕾ちゃんの家だったから、すぐにアイちゃんや小乃羽ちゃんと会えたけど、今は自分の家だから頭痛のこととかも心配してくれているかもしれないし、すぐに蕾ちゃんの家に行った方がいいよね。
私はすぐに仕度をして、家を出た。
その後、蕾ちゃんの家に着き、合鍵を使って部屋に入った。
アイちゃん達がいるであろうリビングに、まずは寄ろうかと思ったが、その前に蕾ちゃんの様子を確認しようと思い、寝室へ向かった。
最近は前ほどお世話できてないからね、何かできることがあったらやっておこう。
そして、私は蕾ちゃんの寝室の扉を開けた────
「あれ、奈留ちゃん? 奈留ちゃんが事前に連絡もなく来るなんて珍しいでござるね」
‥‥‥‥蕾‥‥ちゃん?




