157 無理なお願い
正直、事前に出来る手はすべてやりつくしたと思っている私はどうすればいいか、方法が全然思い付かないでいた。
「アイちゃん、こんな時いい発明品ない?」
『自分で考えてください。 そもそも私はマスターの発明品をそう簡単には使わせたくないんですよ。 腕時計が特別なだけです』
「じ、冗談だよ、あはは‥‥」
アイちゃん、もしかしたら先程の意見を小乃羽ちゃんに邪魔されたから少し不機嫌になってる?
まぁ、何でもかんでもアイちゃんに頼っちゃ駄目だよね。
‥‥私だと使い方わからずに壊すとか、そんなことになる可能性もあるしね‥‥。
しかし、このまま戻っても、ただ通り魔に刺されるという事を繰り返すだけだ。
‥‥そういえば、私はその出来事が起こらないように起こらないように変えようとしていたけど、起こる直前に間に入って助けることが出来るんじゃないかな?
アイちゃんから通り魔の服装は見ているわけだから、通り魔に襲われる時に私がそばにいて何とかお兄様を守ることが出来たら‥‥。
でも、お兄様だから尾行なんてすぐ気配でバレちゃいそうだし、簡単に尾行できる近場ならともかくとして、デートは遠出な訳だから、どうしてもバスに乗らないといけないわけで、一緒の空間にいたらすぐにバレるだろう。
発明品は使えないから蕾ちゃんと一緒に尾行した時のような方法はできないし‥‥。
そうなると思い付くのは一つだけだけど、それをするのはどうなんだろう‥‥。
でも‥‥ここは戻ってから、恥を忍んでお願いしてみるしかなよね。
◆◆◇◆◇◆
また、一週間前に戻ってきた私は頭痛で倒れて一日を無駄にしてしまったが、何とか次の日、お兄様とデートのことについて話すことが出来た。
「どうした、奈留?」
「えっとですね‥‥その‥‥わ、私も桜を見に行くのに付いていってもいいですか?」
思い付いたのはお兄様と磨北さんと一緒に行かせてくれれば、尾行とかしなくても側にいれるし、隠れる必要がないのだ。
正直、おかしなことを言っている自覚はある。
デートの時に妹を連れていく彼氏なんてあり得ないよ、うん。
「ん? 奈留にしては珍しいな。 どうしたんだ?」
「いや、桜が綺麗って言ってたんで、私も見たいなぁと‥‥」
これは断られるなと絶対に思った。
というより、デートを邪魔されたくはないだろうし、磨北さんも許可を出さないだろうし。
「まぁ、俺は祈実がいいって言ったら別にいいぞ。 俺としては綺麗な景色とかは共有したいタイプだからな」
お兄様は優しいからいいって言ってくれたけど、磨北さんは流石にデートだからね‥‥。




