156 何回やっても‥‥
戻った次の日に私はお兄様の説得にとりかかった。
まだデートまでの日にちは余裕はあるものの、日を変えるのは中々厳しいことになりそうだと思っていたのだが‥‥。
「まぁ、奈留がそういうなら少し桜を見に行くのを早めるか」
「本当ですか!!」
何とか交渉の末、日にちを変えることに成功した。
その日にデートすると別れるとか、色々と嘘を並べた訳だけど、後でバレたらどうしよう‥‥いや、これはお兄様の為なんだから‥‥その時になったらちゃんと謝ろう。
「じゃあ、祈実を説得しておかないと────」
「あ、それは私がやります!」
そういえば、二回目の時もこんな会話があったな‥‥。
でも、日にちを変えたんだもん。 きっとバスも事故で横転することも、通り魔に殺されるのこともないよね‥‥?
◆◆◇◆◇◆
『駄目です。 陸さんが通り魔に‥‥刺されました』
一緒だ。 日にちを変えたはずなのに一日に起こることがズレただけだ。
一回だけでもデートの日を変えることが出来たのだってやっとだったんだ。
それを何度も出来るものではないし、だからといって真実を言っても私の言うことを信じて行かないという風にはならないだろう。
「事故がなかったからもうなにも起こらないんじゃないかって、そう‥‥思ってたんだけどね。 日にちを変えても、デートをしようとすればお兄様は死んでしまうんだね‥‥」
こんなに色々やって、でも何にも変わらなくて‥‥私って一体何をやってるんだろう‥‥。
「もう、何をやっても無駄なのかもしれないね」
思い付く方法を全部試したが、無理だったんだから。
『夕闇さん、方法がないようでしたら、いっそのこと陸さんと磨北さんのお付き合いをなかったことにしてみるのもいいんじゃないでしょうか?』
あ、確かにそうだ。 私はなんでそんな簡単なことを思い付かなかったんだろう‥‥。
二人が付き合わなければ、そもそも遠くへデートに行くと言うことにすらならないじゃないか。
それに元々、お兄様と磨北さんの交際は私は嫌だったんだ。
お兄様を助けることができて、付き合っていたことをなかったことにできる‥‥私にとっては最高の結果じゃないか。
「アイちゃん、私その方法 「────ちょっと待ったー!!」 え‥‥」
急に小乃羽ちゃんが現れ、私の言葉を遮った。
「話は聞かせてもらいましたけど、私としてはあと数回は粘るべきだと思います。 お姉ちゃんはきっと良い方法を思い付くはずです!」
そうだよね、今の状態でも回数を重ねていけばもしかすると新しい可能性も‥‥。
『いや、突破口が見えない今、戻るなら早めに戻った方がいいでしょ?』
確かに、数が増えれば増えるほど、脳の負担も増えていくだろうし‥‥。
二人の意見が真っ二つに分かれてしまっている。
私が中途半端なせいだよね‥‥。
「わかった。 あと一回、考えた方法をやって、それが無理だったらアイちゃんの言った通りにしよう」




