155 もっと前に‥‥
お兄様を助けるために戻って、次で五度目。 私はとある決心をする。
「アイちゃん、私脳への負担が増えるとしても、もう少し前に戻るべきだと思うんだ。 駄目かな?」
『いえ、何度も戻っても成果を得られていないわけですから、私はいいと思いますよ』
「でも、お姉ちゃん。 何日戻るにもよりますよね? 流石に戻りすぎると起きることが変わりすぎて、原因が見つけにくくなってしまうかもしれません‥‥」
そうだ、今は事故と通り魔の二つが起きることがわかっているが、変えることによってもっと増えていくかもしれない。
でも、突破口が見えない今より、糸口も見つかりそうだと思えた。
「じゃあ、デートの日から十日前にしよう。 もしかしたらそれくらいならデートの日にちも変えられるかもしれない」
『わかりました。 小乃羽、今回はそっちで行くから』
「うん、了解」
五度目となるともう慣れた手つきで進めていく。
私達は互いに目配せをして、過去へ戻った。
◆◆◇◆◇◆
戻った瞬間、頭が潰れそうになる痛みが私を襲う。
痛みで言葉を発することも、何かを考えることも一切出来ず、床で頭を抱える。
痛みは前回よりも長く、その頭痛は私の許容範囲を超えたような感じがした。
「くっ! うぅぁ‥‥ぁ‥‥─────」
そして私は、初めて痛みで意識を手放した。
意識を取り戻したのはその五時間後で、起きたらアイちゃんと小乃羽ちゃんにめちゃくちゃ心配された。
腕時計に不具合があって失敗したんじゃないかって思われたようだ。
辺りを見渡してみると、今いるのは蕾ちゃん家のリビングのようだ。
でも、戻った場所が蕾ちゃんの家でよかったよ。
もし、自分の家なら事情も知らないお兄様にとてつもなく心配をされて、病院につれていかれるだろうから。
「ごめんね、二人とも。 もう頭の痛みもないし大丈夫だよ」
『でも、今日一日は安静にしていてください。 失神するなんてよっぽどでしょうから』
今回は流石に自分でも危ないんじゃないかと思う痛みだったということもあり、アイちゃんの言葉に黙って頷いた。
「そういえば、小乃羽ちゃんの方は頭痛とか大丈夫なの?」
「あ、はい。 四回とも全く痛みなしでここまで来ているので、心配はご無用です。 それより私は奈留お姉ちゃんの方が心配です」
何で私だけあんな頭痛が‥‥。
回数の問題かと思っていたけど、私に何か欠陥があるんじゃないかと思えてきたよ‥‥。
「ありがとう。 でもまた痛みで気絶したとしても私は諦めることはないよ」
自分を犠牲にしてでもお兄様を助けたいから。




