154 無駄なこと?
「アイちゃん、また同じような出来事が起こるかもしれない。 だけど、戻っていいかな?」
『それは夕闇さんにお任せします。 ですが、確かめるためにはもう何度か戻る必要があるかもしれません』
もう一度やって、これがただの偶然ならそれでいい。
でも、もし次も同じようなことが起きた場合私は、どうしてそうなるかを見つけなければならない。
「覚悟を決めたんだから、大丈夫。 お兄様が無事にデートの後も生きていけるように頑張るよ」
『そうですか。 じゃあ、腕時計を使うのは決まりみたいですが、いつにしますか? 犯人の正体や、陸さんの状態を確認してからいかれますか? それともすぐに?』
「確認したい気持ちもあるけど、戻る期間が長いほど、脳に負担がかかるんだよね? 犯人が捕まるのがいつかわからないし、戻るよ」
それにもうこの時間に私が守りたいものはないから。
『そうですか、では早速準備しましょう』
「時間の設定と血を付けるんだよね」
二回目だから、時間の設定もスムーズに行う。
『あ、二回目以降に同じ人が使う場合は血は付けなくても大丈夫ですよ』
「そうなの? わかった」
まぁ、地味に痛いし、ないなら助かるけど‥‥。
『小乃羽、私は次はあなたの方の腕時計で戻るから準備して』
「了解ー。 大体の話は聞いていたから問題ないよー」
いつの間にか部屋にいた小乃羽ちゃんが、そう返事をする。
『ねぇ、戻ってみて少し後から、ずっと思ってたんだけど‥‥小乃羽って戻る必要あるの?』
「あ、ちょ! 私をいらない子みたいに! 仲間外れは嫌なんてすよ! それにね、お姉ちゃんとアイちゃんがお兄さんのことで色々としていたとき、私戻る前にやった仕事をもう一回やってるんだからね! このままの時間で行くってなったときに困らないように! 努力してやった仕事が白紙に戻ってるって中々の苦痛だからね!」
『わかった、わかったから。 じゃあ、三回目もよろしく』
「‥‥‥」
小乃羽ちゃんのこんな呆然とした顔、初めて見たかもしれない。
『じゃあ、いきましょう』
「うん!」
そして、私達はまた腕時計を使って過去に戻った。
◆◇◆◇◆◇
その後、三度目、四度目と時間を巻き戻してお兄様の行動を変えようとしたが、どちらも変えることができなかった。
元々、バスの本数が少ないこともあり、時間を変えるといっても事故か殺害が起こる、その二本しか適した時間のバスがないのだ。
四時頃にも一本あるが、そうなってくると今度は帰るときに真っ暗になるので、そのバスに乗せるのはどう説得しても難しいし、そのバスが安全とも限らない。
結果として、私は突破口を見つけられず、お兄様を死なせてしまった。
私がやっていることは無駄なのかな‥‥。




