57 デート前夜
デート前日、私は兄さんに、何処に行くのか聞くのと同時に、尾行の許可も貰うことにした。
うん、言わないとか無理でしたね。
「兄さん、それで明日は何処に行くの?」
「ん? あぁ、まずは近くにある映画館にでも行こうかなぁと思ってるよ。 付き合って初めだから、あまり遠出も違うと思うし」
映画かぁ、まぁ確かにいいかもしれないな。
初めだと緊張するだろうし、会話が続かないかもしれない。
そこで、映画だと喋らずに二時間以上の時間を楽しく過ごすことができるし、そのあとの話題も確保できる。
って感じかな。 はぁ、こういう思考は一緒なんだよね兄さんと。
「そうだね。 いいと思うよ」
「丁度、見たい映画があるんだよな~」
あれ、それが真の目的とかじゃないよね兄さん?
小乃羽ちゃんのことを考えてだよね?
「そ、そうなんだ。 兄さん、それでそのデートのことなんだけど」
「こっそり見たいんだろ? いいよ」
やっぱり、気付いてたんですか。
さすが、兄さんですね。
でもそんなあっさり許可していいのか?
「でもいいの?」
「俺の勇姿が見たいんだろう? いいんだ奈留わかってる。 俺が気になって仕方ないのはわかってるから」
何か少し、いやかなり意味合いが違うけど‥‥。
どこでどう間違えたのかな?
「そうじゃなくて、私は小乃羽ちゃんに失礼がないか心配なだけで!」
「そうか‥‥俺じゃないのか。 まぁいい、別に見られて困ることも別にないしな。 でも、明日ばかりは構ってやれないからな」
それは当然ですよ。
私はいないものとして扱ってくれないと!
「わかってるよ兄さん。 ていうか、小乃羽ちゃんをしっかり見てあげないとダメですからね」
「あぁ、そうだな」
兄さんもそのつもりの様だし大丈夫だろう。
まぁ私は、初めの方で少し尾行する程度にしようかな。
ずっとはさすがにダメだと思うし。
「じゃあ明日は、バッチリだね」
「あ、しかし奈留。 一人で尾行は危なくないか? やっぱり誰かいた方が」
別に危なくはないと思うけどな。
兄さんは心配性すぎるよ。
「それは大丈夫だよ兄さん。 一緒に行く人がいるから」
「あぁ、灘実さんか」
いいえ、不正解です。
由南ちゃんは断られました。
「由南ちゃんじゃないよ? 同じクラスの磨北くん」
「‥‥‥‥ん? ま、磨北くん? そ、その磨北くんとやらと一緒に?」
急に兄さんの顔がさっきまでの穏やかな顔とは違う顔に‥‥。
「そうだよ」
「一応聞くが、男‥‥だったはずだよな?」
ん? 前に一度転校生として言ったはずだけど?
「そうだね、クラスメイトで男の子だね」
「二人で?」
「うん、二人で。 じゃあ兄さん、明日のために早めに寝た方がいいよ。 私もそろそろ寝ようかな」
明日休みとはいえ、外に行くから体調万全にしとかないとね。
「‥‥二人‥二人で‥‥男と外出‥」
「お休み、兄さん。 明日頑張ってね♪」
こうして私は自分の部屋に戻った。
少し時間が経ち、一階から兄さんが何か大きな声で叫んでいた。
「───!! ────!!!?」
リビングとは離れているのでよくわからないが、夜中に騒ぐのはいけないと思うよ兄さん!
その後、疲れていたのか、睡魔が襲って、私は特に何をするでもなく眠ってしまった。