148 準備を終え‥‥
アイちゃんの話を聞いて、私は一つの疑問を抱いた。
「そういえば、アイちゃんはどうやって戻るの? 血は出ないし‥‥。 それに今使える腕時計って二つだけだよね? 私達は三人だから一つ足りなくない?」
『私を一人と考えていただけるのは素直に嬉しいのですが、私はAIですから。 腕時計を調べてみると、腕時計一つで一人の人間とAIがいけるみたいです』
「あ、そうなんだ」
だから、二つでも大丈夫なんだね。
『マスターがお作りになったものですからもしかしたら私も一緒に連れていけるようにそうしたのかもしれません。 なので、私用の腕時計は必要ありませんし、特に私には条件はないみたいです』
「なるほど、確かにアイちゃんが近くにいてくれたら何かと助かりそうだし、寂しくないもんね」
でも、かもしれませんってことはそういうことはなかったんだね。
『それよりも、もうそろそろ確認の方が終わります。 心積もりをしておいてください』
「うん、わかったよ」
この五分後くらいに小乃羽ちゃんが来て、腕時計の確認が終わったことを知らせてくれた。
◆◇◆◇◆◇
『じゃあ、戻る日はどうしましょうか‥‥陸さんが亡くなる前日くらいですか?』
「もっと前に戻って、余裕を持つというのは駄目なの?」
『いえ、そういう考えもあるかもですが、戻れば戻るほど、私達の知っている出来事から変わってしまうデメリットもあります。 死んでしまう時間や場所、出来事が変わってしまえば、悪循環になるだけです』
一瞬、出来事が変わるならお兄様に不幸が降りかかる自体を無くすことができるんじゃないかと思ったが、そう上手くはいかないよね絶対に。
「それにですね、お姉ちゃん。 戻る期間が長ければ長いほど、戻った時の脳に負担がかかるっぽいので、その日じゃないとという以外は、あまり余分に戻るなどはおすすめは出来ないです」
「二人がそういうならその方がいいみたいだね。 よし、じゃあ前日だね」
私は腕時計をお兄様が亡くなる前日にセットする。
『では、最後に血ですが、まぁ、針でプツっとやっちゃってください』
「針で‥‥意外に勇気がいるね‥‥」
『気を逸らしながはやればすぐですよ』
包丁で不意に切っちゃうとかならまだしも、自分でやるのはね‥‥でもそうだね、何処かを見ながら‥‥。
「怖いし痛そうだし、スッゴくやりたくないです!」
『どうせ戻れば傷消えてるんだから早くやりなさいよ』
「私にだけ厳しいよアイちゃん!」
あはは‥‥どんなときでも変わらないね、二人は‥‥。




