141 大事な話を‥‥
最後の方だけ視点が変わります。
暇な時間、私は磨北さんにどうやったら謝れるかを考えていた。
かなり酷い態度をとってしまったし、その事について謝りたいが、あれからというもの磨北さんとは出会っていない。
元々、お兄様で繋がっていたようなものだし‥‥一応電話番号なども知ってはいるが、何だかあの時に考えてしまった気持ちを思い出して、電話をかけづらい。
そういえば、電話といえば、あの地獄のような日に磨北さんから電話がくる前にアイちゃんと話していて、それがなんだったのかまだ聞いてなかった。
色々あったから、すっかり忘れていて、アイちゃんを待たせてしまった‥‥申し訳ないな‥‥。
私はあの時の話の続きを聞くために色んな部屋をまわって、アイちゃんを探したが、アイちゃんがいない。
どこか行っているのだろうか‥‥最後に一応呼んでみよう。
「アイちゃん!」
『お呼びですか?』
「うわっと!! びっくりした‥‥アイちゃんそのいきなりの登場の仕方は何とかならないのかな?」
気付いたら真後ろに現れるのは、普通にびっくりするから!
『待たせると悪いなと思うので急いで出てくるんです。 AIなりの優しさですよ』
その心臓に悪い優しさはいらないよ、本当に‥‥。
「見当たらなかったからいないのかと思ってたよ」
『ちょっと仕事関係のことで機械内に潜ってました。 それで、何かご用ですか?』
仕事中だったのかな? それは申し訳ないタイミング。
それなら出来るだけ早めに聞こう。
「いや、色々あって、アイちゃんのあのときの話途中で止めちゃったから今聞こうかなと思って」
『あのときの話?』
「ほら、電話がかかってきたから途中で切り上げたあの話」
『‥‥あ、あれですか。 いえ、あれはもういいです』
「え? 大切なことだったりしないの?」
あの時、アイちゃんが大事な話をしようとしているように思えたんだけど‥‥。
『あれは忘れてもらって大丈夫です。 今話すのはちょっと‥‥』
話すタイミングというものがあるもんね。
「そ、そう? わかった。 でも、また話せるようになったら言ってね」
『はい、そうします』
じゃあ、家事とか、やるべきことに戻りましょうか。
◆◇◆◇◆◇
夕闇さんが部屋から出ていかれてすぐ、私は深く息をはいた。
『今でも夕闇さんはギリギリなはずなのに、マスターがもう目覚めることはないなんて、今の夕闇さんに言えるわけないじゃないですか‥‥』
夕闇さんの心の支えのお兄さん、そして明るく元気な磨北さんがそばにいたからこそ、話しても問題ないと思ったのだ。
その心の支えがなくなってしまった状態で話せば夕闇さんがどういうことになるかは火を見るよりも明らかだ。
『マスター、私はどうすれば‥‥』




