55 隠し事
家に帰った私は、晩御飯の準備を終わらせて暇になったので、久々に広葉とゲームをしていた。
それまで、相手をしていた兄さんは疲れているのかソファーでうとうとしている。
「はぁ~、俺も彼女欲しいなぁ~。 チラッ」
「そう言うのいいですから集中してください。 負けますよ?」
「脈が無さすぎて、悲しい‥‥。 それはそうと奈留ちゃんやっぱり強いね」
そりゃ前世でやってましたから。
その後、無言でゲームしていたのだが、広葉がまたしてもチラチラとこちらを見てくる。
「何か聞きたいことでもあるんですか?」
「陸が付き合いだしたのは聞いたんだけど、どんな感じだったかは教えてもらえなくてさ」
広葉教えてもらってないんだ。
あーでも何となくわかるかも。 凄くまわりにひろめそうに見えるもんね。
「兄さんが教えてないなら、私だって教えませんよ」
「え~いいじゃん。 教えてよ~奈留ちゃん~」
あぁ、今日の広葉は一段と鬱陶しいな。
私は兄さんが寝ているのを確認しながら話した。
「教えませんって。 それに兄さんたぶん私にも喋っていないことあると思いますし」
「え、陸が奈留ちゃんに隠し事!?」
「いや、予想ですけどね。 そう思っただけです」
ただの思い過ごしって可能性の方が大きいだろうけど。
「ふ~ん、じゃあやっぱり陸に直接聞いた方がいいのかな」
「えぇ、そうしてください」
その後もゲームをしていたのだが、無言なのもつまらないので私の方から話すことにした。
「そういえば、今日生徒会選挙に立候補しないかと言われたんですよ」
「へぇ! あの雑用委員長みたいな役職ね。 それで断ったんでしょ?」
それは偏見が過ぎるでしょ!?
それともう断った前提の質問なんですね。
「えぇ、そうですね。 自分が必要というわけではなく、成績で立候補しないかという感じでしたし‥‥」
「へぇ、成績がいいとそんなこと言われるんだね。 成績悪くて良かった」
いや、よくねーよ!
「全然良くないですよ! そういえば、今日はちゃんと宿題してるんですか?」
「え? あ、あはは。 帰ってからします‥‥。 それはそうと、その生徒会をやらないかと言われた時、他にも人いたの?」
「えぇ、蔭道蕾さんという方が一緒でした。 蕾さんは私より成績いいですから。 まぁ彼女も断ってましたけどね」
「蔭道‥‥? どこかで聞いたような‥‥」
あれ? 何か反応がおかしいな。
「どうかしたんですか?」
何か悩んでいる広葉は、急に思い出したかのような顔をした。
「‥‥あ、絶対に関わるなって言われた奴だ」
え、関わるな?
「関わるなって、誰に?」
そもそも広葉、蕾さんのこと知ってたっけ?
なんで、出会ったこともない人に関わるなって‥‥。
あ! もしかして、私の秘密を知っている人がそう言ったんじゃないのかな?
その謎の人は一体何を知っているんだろう‥‥。
「あ‥‥いや何でもないよ奈留ちゃん! よし、この新しく買った方のゲームをしよう!」
いやいや誤魔化しきれてないですけど。
しかし、こんなに隠すのはそうとしか考えられないけど、こうなってしまったら広葉喋らないだろうからなぁ。
その後、特に広葉と話すわけでもなく、謎が残るまま、時間は過ぎていった‥‥。