130 遭遇する
私は小乃羽ちゃんが家に来ることをお兄様に伝えると、問題ないとの返事をいただいた。
「あ、言うの忘れてたが、今日祈実もくる」
「あー‥‥でも、大丈夫なんじゃないですか? 磨北さんコミュニケーション能力高いですし」
小乃羽ちゃんも、好かれやすい性格をしていると思うし、磨北さんと不仲になるところが想像できない。
「それもそうだな。 ま、一応祈実には伝えておくよ」
「お願いします」
私も小乃羽ちゃんに伝えておこうと思い、携帯を取り出したのと同時に、玄関のチャイムが鳴った。
‥‥まぁ、メールの手間が省けたね。
◆◇◆◇◆◇
「では、私はお姉ちゃんの邪魔をしないように端でやってますから。 いないものと思ってもらっても大丈夫です! 気配消してます」
小乃羽ちゃんは来た後すぐにそう言い、電話で話していた通り仕事をしていた‥‥しかも凄く無言で画面とにらめっこしていて、かなり集中しているのがわかる。
逆に私が邪魔をしていないか、不安になるね‥‥。
そんな感じが一時間ほど続いて、そろそろ私も何かしないとと思い始めていると、玄関がなにやら騒がしくなった。
磨北さん、来たみたいだね‥‥。
お兄様と何を話しているのか少し気になった私は、耳を済ませると────
「奈留ちゃんの後輩ちゃんが来てるんだね! 大丈夫! お姉さんとして奈留ちゃんと一緒に可愛がるから!」
うわー‥‥聞くべきではないところを聞いてしまったかもしれない。
これは最近知ったのだが、磨北さんは年下の子と接するとき、物凄く愛でる。 それはもう、過ぎるほどに。
私も例外ではなく、かなり面倒な感じで接してくる。
それをお兄様の前でやられている私は恥ずかしくて死んでしまいそうなので出来ればやめさせたいのだが、磨北さんの弟さんの話を聞いてしまったことで、それがどうしても出来ない。
理由がないなら私だって言えるのだが、弟さんのことがきっとこの年下を溺愛することに表れているだろうからね‥‥。
そうこう考えている間に、磨北さんが入ってきた。
「こんにちは~。 奈留ちゃん、今日もお菓子持ってきたから食べて~」
「あ、ありがとうござい───「お菓子!!」 ──ます‥‥?」
今日、仕事しだしてから初めて反応したね、小乃羽ちゃん。
「それで、小乃羽ちゃんは何処かな?」
「目の前にいますよ?」
というか、さっき大きな反応してたよね?
「‥‥‥‥あ、ホントだ! 初めまして! 磨北祈実です」
あれ? 本当に気づいてなかったっぽい?
これはもしかすると前に言ってた隠密が得意って、嘘じゃなかったのかも?
「福林小乃羽です!」
もしかしたら、集中しているときは影が薄くなるのかも‥‥?




