125 いきなり広葉
しばらく、お兄様達が調べることを再開し始めたので、私はどうしようかと思っていると、お兄様でも磨北さんでもない声が聞こえてきた。
「今日は誰が夕御飯作るの? 陸? それとも奈留ちゃん?」
「あぁ‥‥今日はどうするか───って、何時からいた広葉!」
いつの間にか上がり込んでいた森田先輩に、私達は一斉に飛び上がった。
てっきり、二人がお付き合いしているから気を使って、来ないようにしてるんだと思ってたけど、やっぱり来るんだね。
‥‥っていうか、本当に何で入ってこれるのさ。
「森田先輩、家に来るときはまずチャイムを鳴らしていただいてからじゃないと困ります」
たまにですが、本当にビックリして心臓止まっちゃうかと思うんですから。
「そうだよ。 人様の家に入るんだから、ちゃんとチャイムを鳴らして人が来るまで待ってから入らないと」
「でもね、磨北さん。 それだと俺は一生この家に入れないんだよ」
いや、鳴らしてくれれば私が出ますよ。 お兄様はたぶん確認した後無視するだろうけど‥‥。
「広葉、それより何しに来たんだよ」
「何しにって、学校で桜の名所の話を聞いたから、いい場所あったから紹介しようと思って来たわけですよ。 別に二人が付き合って妬ましく思って邪魔をしに来た訳じゃないぞ?」
別に紹介するだけなら、電話でも何でもいいのではと思ったが、まぁその辺りは口には出さないでおこう。
「あはは‥‥それで、どんなところなの?」
「あぁ、まぁ少し遠いんだけど───」
そう言って、森田先輩は二人に見せる。
「うん! そこにしよう。 何だか調べてみたけど、色々とありすぎるんだよね」
「少し大人し目な感じだな。 まぁ、人があまりいないところの方が落ち着いて見れるしな。 で、交通手段は?」
「その辺りに駅はないけど、バスで行けると思うぞ。 ま、本数は少ないけどな」
何だかお兄様達忙しいそうで、私は今とてつもなく暇だから今日は私が夕御飯作ろうと思い立ち上がろうとすると、お兄様に止められた。
「奈留、もう決まったから、今日は俺が作るよ」
「え、でも別に疲れてませんし、私暇ですから‥‥」
「広葉が来たからな。 奈留に作らせると広葉が喜んでしまう」
あ、そういう理由ですか‥‥別に森田先輩も作る人をそこまで気にしてるわけではないと思いますよ?
というか、せっかくいい場所があるよって教えに来てくれたんだから少しくらい優しくしてあげても‥‥と思ったが、そういえばたぶん森田先輩が邪魔したかっただけなのお兄様気付いてるんだね。
「じゃあ、お兄様にお任せします」
こうしてこの日はお兄様の料理を仲良く三人で食べました。




