121 遠回りをして
蕾ちゃんのお世話をした後、私は家に帰る為に歩いていたのだが、無意識にだけどいつもとは違う少し遠回りの道を通りたくなり、今は普段はあまり通らない道を通っていた。
もしかすると、お兄様がいる家に帰るのが気まずいと無意識に逃げてしまっているのか‥‥お兄様がいる家に帰りたくないなんて普通はあり得ないのに。
逃げるのは自分の中で駄目だと思ったが、もう結構進んできたので仕方なく今日はこのまま進むことにした。
今通っている道をなぜあまり通らないのか、遠回りになるからなのともう一つ、理由がある。
それはもう少し歩くと見えてくるのだが、墓地があるから。
心霊系があまり怖いわけではないが、暗くなればその辺りは結構暗くて危ない気がするのだ。
今日はまだギリギリ暗くはなってないので引き返さず、進んでいるけど‥‥。
そして、墓地が見えてきて、そのまま通り過ぎようとした時、墓地に知っている人がいた。
「あれ、磨北さん?」
少し離れてはいるが、顔はちゃんと見えた。
場所が場所で、迷惑になるかなと普段なら声をかけずに通りすぎるのだが‥‥。
今日の‥‥というか、今の私は先程の遠回りをして辛いと思うところから逃げようしたということで、何だか今通りすぎたら、また逃げたことになるんじゃないかと思ってしまい、私らしくもなく、磨北さんに声をかけてしまった。
「磨北さん」
「あ、奈留ちゃん。 昨日ぶりだね」
磨北さんは私に気づくと笑顔で話してくれた。
‥‥本当に欠点らしいところが全然ないよね。
「はい。 昨日は少し考え事をしていて、上の空になってたかもですが‥‥」
「そうだったっけ? でも、何か悩み事があるからいつでも相談乗るからね」
いえ、今の悩み事を張本人である磨北さんに話すわけにはいきませんとは言えないので、黙っていると何だか間が空いてしまった。
そういえば、磨北さんはお墓で何してたんだろう‥‥いや、お墓参りだろうけど、おじいちゃんのお墓参りかな?
でも、流石にこういうのを聞くのは不味いよね‥‥話しかけた時点でもう駄目な気がするけど‥‥。
「‥‥‥‥」
「うん? 何か気になることでもあるかな?」
何でこの人顔を見ただけでそんなことを察することができるんだ‥‥。
「い、いえ‥‥」
「私がここにいた理由とか‥‥かな?」
何も言ってないのに的確に当てている!
コミュニケーション能力が高い人は皆察しがいいのかもしれないね‥‥。
「えっと‥‥はい」
「そうだなぁ‥‥まぁ、奈留ちゃんならいいか」
磨北さんは何かを決意したように口を開いた。
「私ね、弟がいたの」




