120 心のモヤモヤ
結局のところ、磨北さんに付き合ってることを知らされたことで、料理を作ったあと何をして、何を話したかなど、よく覚えていない。
たぶんだけど、私は作り笑いで相づちを打つぐらいしかしていないだろう。
頭では整理したつもりでも、やっぱりショックだったのだろうか‥‥。
次の日になり、蕾ちゃんの家に来た今でも、脱力感のようなものを感じている。
何もやる気が起きないが、蕾ちゃんの家にはやっぱり来ないとと思って来たのだが‥‥。
「お姉ちゃんの様子がいつもと違うね。 帰ったあと何かあったのかな? アイちゃん知ってる?」
『さぁ? でも気になるなら自分で聞いてみたら? 小乃羽は、たまに空気読まない時あるんだから、そんな感じで聞いてきなさいよ』
「ちょ!? なんてこというんですか! これでも私は空気に流されやすいね~って言われる時あるんですからね!」
『それ絶対に良い意味じゃないわよ』
「というか、それならアイちゃんが聞いてきてくださいよ。 いつもみたいに心無い言葉で。 どうせAIに心は無いんですし」
『言ったな、弟子の分際で!』
「別にアイちゃんの弟子じゃないもんね!」
今までの会話、全部私に聞こえてるけど、どうしてそうなるの!
私は落ち込んでいる場合ではないと思い、二人の元へ駆け寄る。
「二人とも落ち着いて。 喧嘩はダメだよ」
私が入ることで余計に言い争いが過熱したらどうしようかと思ったが、言ったらすぐに落ち着いてくれた。
「あ、お姉ちゃん‥‥ごめんなさい」
『気も使えない弟子で本当に申し訳ございません』
まぁ、二人は仲良しだから止めなくてもそこまで大事にはならなかっただろうけどね。
でも、何だか気を逸らせたからか、先程まで感じていたモヤモヤした気持ちが大分薄れたような気がする。
二人のお陰だね。
「奈留お姉ちゃん。 大丈夫?」
『無理とかしてませんか? 何なら今日も休んでいていただいても‥‥』
自分から手伝いに来てるのに、無気力のままじゃ駄目だよね。
「大丈夫だよ、二人とも。 それよりも今日は何かやることないかな? 体の疲れも全然ないし、大変なことでもいいよ?」
『いえいえ、別にいつも通りで大丈夫ですよ』
「そうですよ! あ、でも私まだ朝食食べてないので、お姉ちゃんに美味しい物を作ってもらいたいなぁ~‥‥なんて」
「うん、今日も頑張って美味しく作るね!」
自分一人でいて塞ぎこんでしまうより、相談してもしなくても誰かが側にいる方が元気になれるというのを今日身にしみて感じた一日だった。




