113 アイちゃんは怖い
「えっと‥‥じゃあ、ベッドにあったのっていうのはどういうことなのかな?」
『その辺りは腕時計が記憶と一緒に過去に飛んでいく機能があったと思います。 推測で、腕にはめていなかったのならですが、夕闇さんが戻ったときに無意識に手を離して、ベッドの中に気付かず放置したということですかね』
使用者にくっついて過去に行くのか‥‥。
過去に戻った時に側にないっていうのは不便そうだもんね。
「あ、確かに腕につけてはなかったね‥‥なるほど、それでベッドの中に‥‥。 何だかようやくだけど私も夢じゃないってことを理解しようという気になったきたよ」
『いえ、まぁ非現実的なのは確かですからね。 仕方がないとは思います』
蕾ちゃんで非現実的なことは慣れていたはずなんだけど、タイムトラベルというのはそれを越えるくらい起こり得ないと私の中で思ってしまっているからね。
「そういえばさ、一つ疑問なんだけど、一回目の時と二回目の時、私同じような事しかしてないけど、なんで一回目は起動して二回目は起動しなかったんだろ? あ、なんか起動条件があるって言ってたね」
『そうです。 それで夕闇さんが起動させることはないだろうと思い、私も初めは起動した可能性を勝手に除外していたわけなんですが‥‥』
「その条件というのは?」
『それは流石に言いませんよ。 というか、一回目にしたんじゃないんですか?』
「たぶん偶然だと思うんだよね、全然思い付かないし。 ‥‥もしかしたら腕時計を落として強い衝撃を与えるとか‥‥」
『‥‥夕闇さん? 腕時計落としたんですか?』
本日二度目となるアイちゃんの軽蔑の目。
「ひっ!? ごめんなさいごめんなさい! まだ蕾ちゃんの大事なものだなんて知らなかったし、わざとじゃないんです!!」
『次からは気をつけてくれたらそれでいいです。 壊れてないみたいですし。 あ、もちろんそれが起動条件じゃないですから、勘違いしないでくださいね』
「う、うん‥‥」
アイちゃんを怒らせると怖いね‥‥小乃羽ちゃんも大変だ。
結局、私は起動条件は分からず、アイちゃんも自分から進んで教えようとは思わないとのことだ。
まぁ、勝手に使われたりする可能性も考えているのかもしれない。 いや、私はないけど。
『あ、この腕時計のことは他言無用です。 まぁ、夕闇さんなら大丈夫でしょうが』
「うん、大丈夫だよ」
それは蕾ちゃんの友達として信頼されているからなのか、話す知り合いがいないと思われての事なのか‥‥いや、まぁ流石に前者かな。




