112 腕時計の機能
「えっと‥‥夢じゃないっていうのは一体‥‥」
『夕闇さんが正夢だと思っている、その夢は夢なんかではなく現実に起こった出来事だってことですよ』
現実に起きた? 流石にそれは‥‥‥‥もしアイちゃんの言っていることが正しいなら、日にちが連続で二回来たということになってしまうけど‥‥。
「いや、でも二回同じ日が来るなんて、夢じゃない限りあるわけが‥‥」
『‥‥これはマスターの意に反することかもしれませんが、話さないことには説明のしようがありませんから仕方がありません。 ‥‥夢以外にもこの発明品の機能を使えば似たような現象を起こすことが出来るんですよ』
「この腕時計の機能? それってアイちゃんが秘密にしようとしてたんじゃ‥‥」
『そうですね、しかしマスターには別に秘密にしてくれとは言われてません。 ただ私がもしかしたらマスターがあまり話たくない事かもしれないと思い、話さない方がいいのではと、話さなかっただけです。 でも今は、秘密にしすぎると夕闇さんにもしもの事があったとき、何も理解していないというのは流石に不味いと判断しました』
「そ、それは喜んでいいのか、よくないのか‥‥」
何だか話してくれるのは嬉しいし、心配してくれてるのもわかるけど、私そんなもしもは起こさないと思うよ?
『それで、この腕時計ですが───』
う~ん、夢の可能性を選択肢から外された私は、もう全くわからないからね。
でも、腕時計自体、一般的な腕時計より少し大きいぐらいの大きさで発明品にしたら相当小さい。
だからきっとそこまで凄いものではないんじゃ‥‥‥‥。
『────タイムトラベルが出来る腕時計です!』
‥‥‥‥ふぁ?
◆◇◆◇◆◇
『つまりですね。 夕闇さんは偶然起動したその腕時計で朝まで遡り、もう一日やり直したというわけですよ』
‥‥全然頭が追い付かない。
アイちゃんは茶化しているわけではないよね?
‥‥いや流石の蕾ちゃんと言えど、過去や未来を行き来出来るようになる発明品を作れるわけ‥‥‥‥ないとも言い切れないのが蕾ちゃんなんだよね‥‥。
でも、そんな夢物語みたいなものを作ってるなんて思ってもいなかった。
「で、でもさ、昨日ちゃんと寝起き独特のだるさみたいなものはあったよ? やり直したんなら起きてたわけだし、そんなだるさは感じないんじゃ‥‥」
どうしても夢だという線を捨てきれず、聞いてみる。
『別に体が一日前に戻ったわけではなく、記憶のみ上書きされたと考えてくれればいいです。 だるさは体は寝ていたわけですから、当然ですね』
記憶を上書き‥‥何だかもう自分には理解不能な世界だね‥‥。




