110 うまく伝えたいけど
『え、なんで夕闇さんが持ってるんですか?』
蕾ちゃんの家に行き、アイちゃんの前に発明品の腕時計出したときの開口一番の言葉がそれだった。
いわゆる軽蔑したような引いているような、そんな言い方で言われた。
いやね、まぁ、事情の知らないアイちゃんから見たら、あれだけ蕾ちゃんが大事なものだって言って、仕舞ったのに、それが何故か、次の日に私が持ってくるっていうのは、盗んだ後にその罪悪感から返しに来たと見えるかもしれないけど! もしそういう状況なら私でも引くかもだけど!
「いや、アイちゃん違うの!! 私別に盗んだりとかそういうことをした訳じゃなくてね!」
『犯人は決まってそう言いますよ』
「あ、そういうことじゃなくてね!!」
アイちゃんからの冷たい視線に、私はいらぬ焦りを感じてしまい、言葉がうまく伝わらない。
それにそもそもだよ? 今、こうして疑われているのに本当のことを話して信じてくれるのかな?
寝ようとしたらベッドの中にありましたなんて‥‥うん、普通は信じられない!
でも、アイちゃんに真実を話してみないことには、このまま犯人扱いをされままってことも‥‥。
「アイちゃん! この腕時計がいつの間にかベッドの中にあってね! それでね!」
『そうですか。 それを報告しに来たんですね』
「そう! そうなんだよ! ‥‥‥‥あれ? そんなあっさり?」
てっきり、は? 何言ってるのか全然わからないんですが、脳正常に働いてますか? ぐらい言われる覚悟だったんだけど‥‥。
も、もしかしてだけど、私のアイちゃんにはもうそんな疑うなんてことをしないくらいの信頼が───
『まずは仕舞った腕時計があるかの確認や防犯カメラの確認を行ってから、判断するべきだと思いまして。 それで判断した結果、もし夕闇さんが嘘をついていた場合‥‥‥‥わかってますよね?』
「───ひっ!?」
相変わらず、アイちゃんの目は怖いままで、私は今までにないほど重たい足取りで、蕾ちゃんの家の廊下を歩いた。
◆◇◆◇◆◇
『‥‥腕時計の二つを確認しました。 どちらとも元の場所から動いていませんでした。 防犯カメラの方にも夕闇さん仕舞う様子が確認された後、誰もその近辺を歩いていないことを確認しましたし、夕闇さんがとることは不可能ですね。 疑ってしまい申し訳ありません』
「いいよいいよ。 流石に疑わない人なんていないだろうから」
内心焦ったけど、疑いが晴れてよかった。
二つともあったってことで、私が間違えて持って帰ったとかそういう線もなくなったわけだし。
‥‥‥‥じゃあ、今ここにある腕時計は何なんだろう?
『しかし、そうなると変ですね。 マスターは三つ目を作ったというのはマスターの側にいた私がないということを断言しますが、じゃあ、これは一体‥‥外側だけ同じというのもないとは思いますが、一応本当に同じものなのか一度確認をしてきます』
「うん」
面倒事を持ち込んで、私の方も本当に申し訳なく思いながらも、アイちゃんの結果を待った。




