100 その日の始まり?
「では、いってきます」
通常なら起きたらまず、朝食を作り始めるのだが、ここ一週間は通常より早めに起きて尚且つすぐに学校の支度をし、朝食を食べずに家から出る生活をしている。
「朝食くらい食べていかないか? 兄が旨い料理を作ってやるぞ?」
今起きてきたお兄様の声が後ろから聞こえる。
くっ、お兄様の料理! 魅力的過ぎて私の足が家から出るのを拒んでいるように動かなくなったが、その瞬間蕾ちゃんのことが頭に浮かび、私はギリギリ耐えた。
「‥‥大丈夫です。 それだと早く起きた意味がなくなっちゃいますから」
無理矢理に笑顔を作り、私は家を出た。
‥‥私が朝食を作らないという、私のやるべきことを放棄しているにも関わらず、お兄様は優しく言ってくれているのに、それも断るって‥‥もう私、最低最悪の存在する価値のない妹なのではないだろうか‥‥。
若干、自分が嫌いになりつつも、今は蕾ちゃんだと気持ちを切り替えて、蕾ちゃんの家に向かった。
◇◆◇◆◇◆
蕾ちゃんの家に着き、扉を開けるとアイちゃんの姿はなく、薄暗い玄関だった。
やっぱり今もアイちゃん頑張ってるんだろうね‥‥。
そういえば、小乃羽ちゃんは今何処にいるんだろう。
でも、まずは蕾ちゃんの寝室へ行き、蕾ちゃんの様子を確認しないとと思い、扉を開けると、変わらずに横になっている蕾ちゃんのベッドにもたれ掛かるように小乃羽ちゃんが寝ている姿が見える。
「小乃羽ちゃん、蕾ちゃんの様子を見てて寝落ちしちゃったのかな」
本当にちゃんと休んでいるのか心配になってくるね、横になって寝てないと。
そばにあった毛布を小乃羽ちゃんに被せてあげて、その後私は学校へ行くギリギリまで、蕾ちゃんの様子を見ることにした。
「‥‥よし、そろそろ学校行かないとね」
通学路を一人で行くというのはやっぱり寂しいな‥‥。
でも、これはきっと蕾ちゃんと一緒に登校していた時の方が私にとっての日常だったってことの証だろうから‥‥辛いけどこの気持ちを忘れないようにしないとね。
◇◆◇◆◇◆
学校では蕾ちゃんと常に共にいたこともあり、私はついにクラスでボッチになってしまったわけだけど、蕾ちゃんのことを考えているせいか、時間も早く進んでいるようで、特別一人でいるということを感じることは少なかった。
そして、すぐに放課後になり、私は誰とも会話せず、昨日と同じように蕾ちゃんの家に向かう道を歩いていると、後ろから声をかけられた‥‥何だか前にもこんなことあったね。
「あ、奈留ちゃん。 今帰り?」
そこには前と同じような笑顔で手を振る磨北さんの姿があった。




