93 巡り巡って
「見つかってよかったね」
小乃羽ちゃんの手にある鍵を見ながら、私は言った。
「はい! あの女の人とお姉ちゃんのお陰です!」
「あはは‥‥ほとんど私役に立ってないけどね‥‥」
見つけたのは灘実さんだし、私は探したのは探したけど、結局見つけられなかったし。
「いえいえ! お姉ちゃんがいてくれたからきっとこの場所にいて、あの女の人に出会うことが出来たんですよ。 つまりはお姉ちゃんのお陰でもあるわけですよ」
「そう‥‥なのかな?」
確かに二人で探していて早めに道を進んだかもしれないけど‥‥。 でも、結局は灘実さんと出会ったと‥‥。
「そうですとも! じゃあ、私は約束している師匠の家に向かいますが、お姉ちゃんも少し寄っていきませんか?」
「え? いや私は今日行くって言ってないし‥‥」
「いきなり行っても大丈夫ですよ! ほら、私が行けるならお姉ちゃんは余裕です」
弟子と友達はまた違うんじゃないかな、と思うんだけど‥‥。
でも、この感じはとても断りにくいんだよね‥‥私も別にやることはそんなにないし。
「じゃあ、少し‥‥。 でも開発作業とかになったらすぐに帰るからね?」
「それで大丈夫ですよ! お姉ちゃんがいると師匠が笑顔になってくれるので出来ればずっといてほしいところではありますけど、お姉ちゃんにも色々あるはずですからね」
う~ん、何もないんだけど‥‥。
まぁ、行ってからどれくらいいるか決めようかな?
◇◆◇◆◇◆
蕾ちゃんが住んでいるマンションまで到着し、エレベーターで最上階まであがっているのだが、そういえば小乃羽ちゃんと一緒に蕾ちゃんの家に行くのって珍しいかも、なんてことを考えながらあがっていた。
いつもは既にいるか、あとから来るかだからね。
「はぁ、本当に鍵が見つかってよかったです。 もう死んでも離しません! あ、そうだ、鍵に名前をつければ愛着も‥‥」
「いや、そこまでしなくても、猫とか犬じゃないんだし‥‥」
それに名前つけても忘れるときは忘れると思うよ、うん。
「あはは、今度鍵をペットみたいに改造してもらうのもありかもですね~っと、最上階着きました」
「蕾ちゃんならできちゃいそうなのがなんとも‥‥。 そういえば、蕾ちゃん起きてるなら別に鍵必要ないんじゃないかな?」
朝、寝てるときならともかくとして。
「集中してると周りの音がが聞こえなくなったりしますからね。 まぁ、一応必要なんですよ。 っと、ではでは私の鍵で扉がオープン!」
そして、小乃羽ちゃんが勢いよく扉を開ける。
「小乃羽ちゃん、今日テンション高いね。 ‥‥って、あれ? いつもなら扉を開けたときにアイちゃんがいるのに」
「そういえばそうですね。 まぁ、何か作業してるんじゃないでしょうか。 今の時間帯は作業部屋にいることも多いですから」
まぁ、この時間帯にいきなり来ることなんてないし、その辺は小乃羽ちゃんの方が詳しいだろうね。
そして、作業部屋を覗いてみたのだが───
「あれ? 真っ暗だね」
「本当ですね‥‥じゃあ、リビングとかでしょうか?」
その後、リビングに行ったのだが、リビングにも蕾ちゃんはいなかった。




