92 無くしたそうです
学校がお休みの日。
私は特に外にいく予定もなく家の掃除を始めたのだが、そんな時私の携帯に一本の電話が掛かってきた。
『もしもし、お姉ちゃんですか!』
「あれ? 小乃羽ちゃん、どうしたの?」
小乃羽ちゃんから電話が掛かってくることは珍しいので、何で掛けてきたのかはわからないが、何だか緊急事態なのか焦っていることがわかる。
もしかしてだけど、何か良くない事件なんかに巻き込まれたんじゃ───
『師匠の家の鍵、無くしちゃいました! 助けてください!』
確かに不味いことだけどね!
緊急事態ではあったけど、思った以上に大事ではなかったね。
◇◆◇◆◇◆
私は掃除を中断して、小乃羽ちゃんのいる場所に行き、事情を聞いてみると、家を出た時はまだ持っていたらしいのだが、蕾ちゃんの家に行く途中で無くしたようだ。
「あぁー不味いです! 本当に殺される‥‥アイちゃんに」
「怒るのは蕾ちゃんじゃないんだね‥‥。 でも、もしかしたら誰かが拾っていて、交番とかに届けてくれてたりするんじゃない?」
「私もそう思って確認してみたんですが、届いてないそうで‥‥」
何だか小乃羽ちゃんが今までにないくらいの落ち込み方してる‥‥。
「そ、そこまで落ち込まなくてもいいと思うよ? あ、蕾ちゃんに聞いてみればいいんじゃない? 鍵にGPS付けてたりするんじゃ‥‥」
「師匠のには付けてるそうでなんですが、私のには付けてないみたいです。 それに師匠に無くしたことはバレたくないので‥‥」
「う~ん、まぁ、小乃羽ちゃんが歩いた道を探そっか」
「一緒に探してくれるんですか! お姉ちゃんは女神様ですか‥‥」
「いや、そこまでのことじゃないんじゃないかな?」
ここにいたなら誰だって探そうとするよ、うん。
そうして、私達は協力して鍵を探すことになった。
◇◆◇◆◇◆
「鍵、ないね‥‥」
「はぁ、もう死んで詫びるしかないんでしょうか‥‥」
「いやいや、それは思い詰めすぎだから! 蕾ちゃんとアイちゃんも許してくれるよ、絶対に」
でも、こんなに探してないとなるとやっぱり誰かが拾っているんじゃないだろうか‥‥。
そう考えていると、後ろから声を掛けられた。
「この鍵、あなたたちの?」
声のする方を向くと、同じクラスの灘実さんがいた。
「さっき道で拾って交番に届けようと思ったんだけど、あなたたちが何か探してるみたいだったから───」
「それですそれです! ありがとうございます、拾っていただいて!」
「それならよかったわ。 じゃあね」
鍵を小乃羽ちゃんに渡すと、すぐにその場から去っていった。
私には気付いていなかったのかはわからないけど、何時もとは何だか感じが違ったね‥‥。
‥‥でも、やっぱり少し怖かった。




