85 兄弟について
磨北さんと接してみて、わかったことが何個かあるが、いちばんはやっぱり、コミュニケーション能力が高すぎるほど高いことだ。
何だかよく分からない内に仲良くなっていっても可笑しくはないくらい、話すと楽しい空気になるし、磨北さんも笑顔で磨北さん自身が楽しそうに見えるし、これはお兄様とも仲良くなったのは必然だったと言ってもいいくらいだ。
「でも、夕闇くんの妹がこんなに可愛いなんて思ってなかったよ。 何だかこう‥‥愛でたくなる感じだね!」
「ま、よくできた妹だよ。 兄弟喧嘩とかも全然しないしな」
‥‥って! いつの間に私のことについて話してるんですか!
あと、そういう話は本人のいない場所でやってほしいわけなんですが‥‥流石に恥ずかしいので‥‥。
「兄弟喧嘩‥‥」
今日、勉強中以外では初めて磨北さんの顔に笑顔がなくなった。
急にどうしたんだろう‥‥。
もしかしたら磨北さんにも兄弟がいて、あまり関係がよくなかったり? そもそも兄弟はいるのだろうか?
「そういえば、磨北には兄弟いるのか?」
お兄様も同じ疑問をもったみたいだね。
「‥‥ううん、いないよ。 私一人。 だから‥‥‥‥奈留ちゃんみたいな妹がいて、夕闇くんは羨ましいね!」
「まぁ、そうだな」
ただ、兄弟がいないから羨ましいなぁって言うことだったのかな?
でもまぁ、それしか考えられないし‥‥一人の感覚って、妹の私には理解しようにも出来ないことだろうし。
「というわけで、奈留ちゃん。 私に甘えてもいいんだよ?」
「何言ってるんですか」
「今一瞬だけど奈留ちゃんの目が軽蔑の目に‥‥」
さっきの話からなんでそういうことになるのか、全く理解できません。
何だか磨北さんという存在をやっばり疑わないといけない気が‥‥。
「まぁ、奈留。 今日は初対面だから仕方がないかもだが、悪いやつじゃないから、仲良くしてやってくれ」
「お兄様が言うのでしたら‥‥」
悪い人じゃないことはわかりますけど、私としては一定の距離を開けておきたい。
仲良くしようとはすると思うが、友達のようになってしまってはダメな気がする。
「磨北もあまり強引に近づいたりするなよ?」
「さっきのは可愛いものが好きなのでつい言っちゃっただけで‥‥別に楽しく普通にお話するくらいだよ」
「それならいいがな。 まぁ、勉強も目標にしていたところまで終わったし、そろそろ勉強会もお開きにするか」
「そうですね、もうそろそろ夕飯の支度をしないといけませんし‥‥。 あ、磨北さんも食べていかれますか?」
「あ、うん。 お言葉に甘えて。 ありがとう」
まぁ、お兄様に言われたように少しくらいなら自分から仲良くした方がいいと思いましたし、お菓子のお礼も兼ねてですけどね。




