81 考え事をしていて
蕾ちゃんを無事に濡れることなく家に送り届けた私は、発明品発表会をしようとする蕾ちゃんからなんとか逃げ、家に帰った。
送り届けた時間がかなり遅かったのに発表会なんて見てたら絶対にお泊まりコースになっちゃうからね。
明日が休みとはいえ、流石に断ったね。
リビングの扉を開けると、少し前に帰ったであろうお兄様がソファーでくつろいでいた。
「お兄様、ただいま帰りました」
「お帰り奈留。 遅かったな」
「蕾ちゃんが傘を持ってなかったので、止むまで話そうと‥‥まぁ、結局止まずに私の傘を二人で入って帰ったので、それでですね」
「あー‥‥そういうときに話すとつい長話になったりするもんな」
「そうなんですよね。 そういえばお兄様、今日は森田先輩いないんですね」
普通はいない方が正常なのだけど、本当に毎日いるから‥‥学校のある日は特にね。 いない日の方が少ないんじゃないかな?
まぁ、今日いない理由はなんとなくわかるけど、一応ね。
「あぁ、今日は一緒に帰ってないからな‥‥って一緒に帰ってたら家に上がるっていうのもおかしい気がするが‥‥。 実は俺もさっき帰ってきた所なんだが、同級生に勉強を教えてたんだ」
やっぱり。 蕾ちゃんと予想していた通りだね。
「磨北さんですか?」
「覚えてたか。 そう、その磨北と勉強をしてたんだ。 俺も復習になるし、広葉よりも教えるのが楽だから別に断る理由もないしな」
お兄様は復習とかしなくても全く問題ないと思いますけど‥‥いや、今はそれよりも!
「その磨北さんと最近は仲がよろしいんですか?」
「話は合うぞ。 今日も勉強はしてたが、普通に世間話とかもしてたしな。 ま、仲はいい方なんじゃないか?」
「そ、そうですか‥‥」
何だか、お兄様自身からそんなことを聞いていると凄く心にくるものが‥‥。
でも磨北さんの方は蕾ちゃんが調べてくれるとしても、お兄様のことは私はわかっておかなければ‥‥。
「それでな、奈留‥‥‥‥のことなんだが‥‥‥‥‥‥‥‥」
あー! 聞くのが怖い! これ以上、磨北さんとの関係を聞くのは‥‥。
「おーい、奈留。 聞いてるか?」
「あ、はい! 聞いてます!」
すみません、自分の世界に入って、全然聞いてませんでした‥‥。
でも、ここから聞いてませんでしたとは私は言えないので、ここは聞いてた風に装うしかない!
「じゃあ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
何が大丈夫かはわからないけど、私は何かを了承したらしい。
その後もよくわからないまま、この話は終わった。




