80 隣で歩いている人は
「お兄様と‥‥隣で歩いてる女の人誰!」
傘で顔はわからないが、スカートをはいていることから確実に女性であることがわかる‥‥いや、森田先輩に女装癖があればまた別だけど‥‥。
今のところ、思い当たる人は一人しかいないが、もしもという可能性がある。
確認するためにも回り込んで顔をみたい‥‥。
「‥‥な、奈留ちゃん! そんなに移動しようとすると、傘からはみ出して、雨で濡れちゃうでござるよ!」
「あ、ごめん、蕾ちゃん。 気になっちゃって」
蕾ちゃんのことを気にせずに顔を見に行こうとしてしまった‥‥。
次からは気を付けないと‥‥お兄様のことになるとついね。
「でも、あれって磨北さんでござろうか? そんなに一緒に帰るほど仲良くなってたとは驚きでござる‥‥」
「いや、まだ決まったわけではないけど‥‥あ、そういえばまた勉強を教えるって言ってたから、今日がそうだったのかも?」
だから、勉強が嫌いな森田先輩は先に帰って、残った二人が今こうして一緒に帰ってると‥‥。
くっ! 羨ましい!
「じゃあ、確定でござるね。 まぁ、でも一緒に帰るって結構、恋の転機になったりするでござるよね」
「‥‥‥‥割って入ってくる」
「ちょ! 奈留ちゃん!! 流石にそんなことしたら逆に奈留ちゃんの印象が悪くなるでござるよ!」
「‥‥そうだね。 ごめん」
磨北さんの方ならいくらでも印象が悪くてもいいが、お兄様には出来るだけそういうのは無しでいたい。
「それに、一緒の傘に私達は入っているのでござるから必然的に私も一緒に行かなくちゃいけなくなるでござるし、流石に第三者の私は気まずいというか‥‥絶対行きたくないでござる!」
「なんかそれが第一の理由に聞こえるんですけど!? いやまぁ、冷静になったから大丈夫」
「それはよかったでござる。 ま、今日のところは勉強会終わりで別々に帰る必要もないから一緒に帰ってるって所でござろうな」
「まぁ‥‥そうだね」
流石になにもないのに一緒に帰りだしたら、それはもう確実に友達以上だもんね。
「でも、油断してるとあっという間に物事が進みそうでござるから、情報収集は明日の休みにもやっておくでござるよ」
あ、でも今度もアイちゃんが調べてくれるんだろうけど‥‥何だかこんなことに時間かけてって言われそうで本当に怖いんだよね‥‥。
あと、なんか秘密にしていることとかでも調べてきそうだし。
「休みだからいっぱい時間あるかもだけど‥‥あまり時間かけてやらなくてもいいからね?」
「‥‥? わかったでござるよ」
今の表情を見ると本格的に調べるつもりだったようだ‥‥言っておいてよかった‥‥。
そして、私は蕾ちゃんを家に送り届けるため、お兄様達が行った道とは違う道を曲がらなければいけなかったので、それ以上その二人を追うことはしなかった。




