71 咄嗟に
私は鞄を捨て、急いで蕾ちゃんの元へ駆け寄る!
「蕾ちゃん! 蕾ちゃんっ!」
蕾ちゃんを揺するが、蕾ちゃんは何も反応しない。
もしかして熱かと思い、頬などを触ってみるが、そこまで熱くはない。
「‥‥そうだ! 救急車!」
急にはっとなり、私は携帯を取り出す。
こんなこと今までなくて戸惑っているのか、ただ寒いからなのか、手が震えて中々携帯を使えない。
そして、震えながらも番号を打とうとした時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえる!
『夕闇さん駄目です!!』
「え」
後ろを向くとアイちゃんが、慌てた表情でいるのがわかる。
『夕闇さん、救急車を呼んじゃ駄目です』
「ど、どうして‥‥蕾ちゃん倒れたんだよ!?」
一刻を争うと思った私は止めるアイちゃんが何が言いたいのかわからず、つい強く言葉を発してしまう。
『それはわかってます! だからベッドに運んでもらえませんか?』
「ベッドに行ったって何が出来るわけでも───」
『お願いします』
アイちゃんのその真剣な表情に私は何も言えなくなってしまう。
アイちゃんの言葉に従うか、救急車を呼ぶか‥‥。
考えればすぐに答えはでた。
‥‥アイちゃんが蕾ちゃんを危険な目にあわすはずがない。
「わ、わかった。 アイちゃんを信じる」
そして私は蕾ちゃんの上半身を持ち、下半身を引きずらせながら、何とかベッドまで蕾ちゃんを運ぶ。
その間も蕾ちゃんは一切喋ったりすることもなく、何がどうなっているのか、わからないままだった。
「はぁはぁ‥‥‥ベッドに横たわらせたけど、あと私が出来ることは?」
『頭にその発明品を被せてください』
アイちゃんが指差す方にはゴツゴツしたヘルメットのように頭に被れるようなものが置かれていた。
「被せたけど‥‥」
『あとは私の方で何とかします。 夕闇さんは学校へ行って下さい』
何の説明もなく、学校に行け‥‥?
「っ、そんなの出来るわけないじゃん! 友達が倒れて行けるわけないよ。 倒れたのって病気とかそういうことじゃないよね? というか、蕾ちゃんは何で倒れたのかアイちゃんは知ってるんだよね!?」
『私の口からは何とも‥‥。 ですが、夕闇さん。 あなたの出来ることは終わりました、それに‥‥マスターも自分が迷惑をかけることは望んでないはずです』
そこで蕾ちゃんを出されると私は何も言えないよ‥‥。
それに今こうしていることが、邪魔になっているかもしれない。
「‥‥わかった。 でも、学校が終わったらすぐに来るから」
『はい、それでしたら大丈夫だと思います』
納得は出来てない。
だけど、蕾ちゃんもきっと学校に行けというだろうから。
私は廊下に投げ捨てた鞄を拾い、玄関の方へ歩く。
『夕闇さん』
ドアに手をかけたところでアイちゃんに呼ばれ振り向くと、こちらに深くお辞儀をしている姿があった。
『マスターのために、ありがとうございました』
アイちゃん‥‥。
「蕾ちゃんをよろしくね」
『はい!』




