69 二人のお陰で
そして、勉強の方も一段落ついたところで、お兄様が私の部屋に来た。
「そろそろ、夕食をだな‥‥奈留忙しそうだから俺が作るがいいか?」
「いえ! もう暇なので大丈夫です! 私が作ります!」
「いやでも、蕾さん来てるのに一人にしておくわけにはいかないだろ?」
確かにそれはそうかもしれないけど‥‥でも、あまり蕾ちゃんは気にしてなさそうだけど。
「でもやっぱり、私が作ったものを食べてもらいたいから‥‥」
「奈留‥‥」
お兄様にたいする我が儘なんてこれぐらいしか言えないが、これだけは譲れないのだ。
「あの‥‥お二人とも。 二人で一緒に作るって言うのは無しなのでござる?」
「いやだってお兄様には休んでいてほし‥‥あれ? そういえばお兄様と、一緒に料理を作るってこと最近はあまりないなぁ‥‥」
「確かに。 奈留がまだ料理を覚えたての頃はよく一緒に作ってたけどな。 もう、完全に作れるようになったから、二人で作るってなったら邪魔に思われるかもとは思って二人ではやらなかったんだが‥‥。 でも久々にいいかもしれないな」
「そ、そうですね。 私も何だかお兄様と共同作ぎ‥‥いや、料理を久々に一緒に作りたいと思いました」
お兄様とあれこれと相談しながら料理を作る。
今まではどうすればお兄様に休んでいてもらいつつ、食べてもらえるかってことばかり考えていて、それが正しいと思っていたが、でも、一緒に何かをするっていうことの方が楽しいに決まってる。
「じゃあ、奈留。 丁度蕾さんもいることだし、今まで食べたことないような美味しい料理を作ろう」
「はい、お兄様!」
こうして私達は二人でキッチンに立ち、料理を始めた。
久々に二人でやっているはずなのだが、やはり兄妹だからかもしれないが、息が凄い合っているような気がする。
そして、たまに一瞬手が触れたりすると、一瞬にして私の心臓の音が大きくなる。 不意には卑怯だよね‥‥。
そんな光景を蕾ちゃんは何だかニヤニヤした表情で見ていたが、私は出来るだけその視線を無視して調理をしていた。
◇◆◇◆◇◆
「もう、人生でこれだけ食べ続けても問題ないくらい美味しいでござる‥‥! というか、本当に毎日食べたいでござる」
二人で作った料理は食べる前から、匂いなどでもう美味しそうな感じを醸し出していたが、食べ始めた蕾ちゃんの蕩けるような表情を見て、確信する。
「やったな、奈留。 思った以上にうまくできたな」
「お兄様が凄いから‥‥いや、一緒に作ったから、ですかね?」
「あぁ、二人とも手が空いていれば、一緒に作るっていうのも悪くないかもしれないな‥‥ま、たまにだな」
「あはは、そうですね」
一緒に料理をする前は思わなかったけど、今はもう、次はいつかなぁと考えてしまう自分がいる。
「奈留ちゃん、嬉しそうでござるね」
「うん♪」
「お、びっくりするほど、素直でござる!」
友達は少ないかもしれないけど、私は今、この楽しい時間があるのはきっと友人の蕾ちゃんのお陰で‥‥そして、私の大好きなお兄様のお陰で‥‥。
だから‥‥私の人生に二人がいてくれて本当に良かったと心からそう思う。




